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平家物語原文全集「願立 1」 |
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著作名:
古典愛好家
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神輿をば、客人(まろうと)の宮へ入れ奉る。客人と申すは、白山妙利権現にておはします。申せば父子の御中なり。まづ沙汰の成否は知らず、生前の御悦(よろこ)び、ただこの事にあり。浦島が子の、七世の孫にあへりしにも過ぎ、胎内の者の、霊山の父を見しにも超えたり。三千の衆徒踵を継ぎ、七社の神人袖をつらね、時々刻々の法施祈念、言語道断の事どもなり。
山門の大衆、国司加賀守師高を流罪に処せられ、目代近藤判官師経を禁獄せらるべき由、奏聞すといへども、御裁断なかりければ、さも然るべき公卿・殿上人は、
「あはれとく御裁許あるべきものを。昔より山門の訴訟は他に異なり。大蔵卿為房・太宰権帥季仲は、さしも朝家の重臣なりしかども、山門の訴訟によって、流罪せられにき。況や師高などは、事の数にやはあるべきに、子細にや及ぶべき」
と申し合はれけれども、大臣は禄を重んじて諫めず。小臣は罪に恐れて申さずと云ふ事なれば、各々口を閉ぢ給へり。
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