|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
枕草子 原文全集「関白殿、二月廿一日に」 其の三 |
著作名:
古典愛好家
13,323 views |
関白殿、二月廿一日に
其の二
おはしまし着きたれば、大門のもとに、高麗、唐土の楽して、獅子、狛犬(こまいぬ)をどり舞ひ、乱声の音、鼓の声にものもおぼえず。こはいきての仏の国などに来(き)にけるにやあらむと、空に響きあがるやうにおぼゆ。
内に入りぬれば、色々の錦のあげばりに、御簾いと青くかけわたし、屏幔どもひきたるなど、すべてすべてさらにこの世とおぼえず。御桟敷(さじき)にさし寄せたれば、またこの殿ばら立ち給ひて、
「とう下りよ」
とのたまふ。乗りつる所だにありつるを、いますこしあかう顕証(けそう)なるに、つくろひ添へたりつる髪も唐衣の中にてふくだみ、あやしうなりたらむ、色の黒さ赤ささへ見えわかれぬべきほどなるが、いとわびしければ、ふともえ下りず。
「まづ後なるこそは」
などいふほどに、それもおなじ心にや。
「しぞかせ給へ。かたじけなし」
などいふ。
「はぢ給ふか」
など笑ひて、からうじて下りぬれば、寄りおはして、
「『むねかたなどに見せで、かくしておろせ』と、宮の仰せらるれば、来(き)たるに、思ひぐまなく」
とて、ひきおろして、ゐてまゐり給ふ。さ聞こえさせ給ひつらむと思ふも、いとかたじけなし。
1ページ
|
前ページ
|
1/4 |
次ページ |
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
枕草子 原文全集「関白殿、二月廿一日に」 其の二
>
枕草子 原文全集「たふときこと/歌は/指貫は/単衣は」
>
平家物語原文全集「殿下乗合 5」
>
蜻蛉日記原文全集「また二日ばかりありて」
>
枕草子 原文全集「碁を、やむごとなき人のうつとて/をそろしげなるもの」
>
蜻蛉日記原文全集「県ありきのところ」
>
蜻蛉日記原文全集「貞觀殿の御方はおととし尚侍になりたまひにき」
>
最近見たテキスト
枕草子 原文全集「関白殿、二月廿一日に」 其の三
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング