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「女史箴図」とは わかりやすい世界史用語589
著作名: ピアソラ
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「女史箴図」とは

女史箴図(じょししんず)は、中国の古代絵画の中でも特に有名な作品の一つです。この絵巻は、現在はロンドンの大英博物館に所蔵されています。

歴史的背景

女史箴図は、晋代(266-420年)の詩人であり官僚であった張華(232-300年)が292年に書いた詩「女史箴」に基づいています。この詩は、晋の恵帝(290-301年)の皇后であった賈南風(257-300年)に対する戒めとして書かれました。賈南風の暴力的で不道徳な行動が宮廷内で問題視されていたため、張華はこの詩を通じて宮廷の女性たちに対する教訓を伝えようとしました。



絵巻の内容

女史箴図は、張華の詩を視覚的に表現したもので、宮廷の女性たちの模範的な行動を描いた場面が含まれています。絵巻は全12場面から構成されていましたが、現在はそのうちの9場面のみが現存しています。失われた最初の3場面は、早い段階で失われたと考えられています。

絵巻の各場面は、歴史的な宮廷女性の逸話や、宮廷生活の一般的な側面を描いています。例えば、絵巻の中には、漢の班婕妤(はんのはんじょく)や、魏の甄氏(けんし)などの女性たちの逸話が描かれています。これらの逸話は、女性たちがどのようにして徳を積み、宮廷内での地位を確立したかを示しています。

女史箴図の重要性

女史箴図は、中国の絵画史において非常に重要な作品とされています。その理由の一つは、この絵巻が現存する最古の中国の絵巻物の一つであることです。また、この絵巻は、中国の宮廷文化や女性の役割についての貴重な洞察を提供しています。

さらに、女史箴図は、その美しい描写と細部へのこだわりからも高く評価されています。絵巻の中の人物や風景は、非常に細かく描かれており、当時の宮廷生活の一端を垣間見ることができます。このような細部へのこだわりは、絵巻の制作者である顧愷之(345-405年)に帰されることが多いですが、現代の学者たちは、この絵巻が唐代に制作されたものであり、顧愷之の模写である可能性が高いと考えています。

女史箴図は、中国の古代絵画の中でも特に重要な作品であり、その歴史的背景や内容、そしてその保存と伝来の過程を通じて、中国の宮廷文化や女性の役割についての貴重な洞察を提供しています。この絵巻は、その美しい描写と細部へのこだわりからも高く評価されており、現代の学者たちによってもその価値が認められています。

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