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蜻蛉日記原文全集「さる心ちなからん人にひかれて」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

さる心ちなからん人にひかれて

さる心ちなからん人にひかれて、又、知足院のわたりにものする日、大夫もひき続けてあるに、車どもかへるほどに、よろしきさまにみえける女ぐるまのしりに続きそめにければ、おくれず追ひ来(き)ければ、家を見せじとにやあらん、とくまぎれ行きにけるを、追ひてたづねはじめて、又日かくいひやるめり。

おもひそめ物をこそおもへ今日よりは あふひはるかになりやしぬらん

とてやりたるに、

「さらにおぼえず」


などいひけんかし。されど又、

わりなくもすきたちにけるこころかな みわの山もとたづねはじめて

といひやりけり。大和だつ人なるべし。かへし、

みわの山まちみることのゆゆしさに すぎたてりともえこそしらせね

となん。

かくてつごもりになりぬれど、人は卯の花のかげにも見えず、おとだになくてはてぬ。

廿八日にぞ、ひもろきのたよりに、

「なやましきことありて」


などあべき。



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