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蜻蛉日記原文全集「五月に帝の御服ぬぎにまかでたまふに」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

五月に帝の御服ぬぎにまかでたまふに

五月に帝の御服ぬぎにまかでたまふに、さきのごと、

「こなたに」


などあるを、

「夢にものしく見えし」


などいひて、あなたにまかでたまへり。さてしばしば夢のさとしありければ、

「違ふるわざもがな」


とて、七月、月のいとあかきに、かくの給へり。

みしゆめをちがへわびぬるあきのよぞ ねがたきものと思ひしりぬる

御かへり、

さもこそはちがふるゆめはかたからめ あはでほどふるみさへうきかな

たちかへり、

あふとみしゆめになかなかくらされて なごりこひしくさめぬなりけり

との給へれば、又、

ことたゆるうつつやなにぞなかなかに ゆめはかよひぢありといふものを

又、

「ことたゆるはなにごとぞ。あなまがまがし」


とて、

かはとみてゆかぬこころをながむれば いとどゆゆしくいひやはつべき

とある御かへり、

わたらねばをちかた人になれるみを 心ばかりはふちせやはわく

となん、夜ひとよいひける。



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