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『近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ』 現代語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
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はじめに
このテキストでは、万葉集に収録されている歌「近江の海夕波千鳥汝が鳴けば心もしのに古思ほゆ」の原文、現代語訳・口語訳、品詞分解とその解説を記しています。万葉集の266首目の歌です。
※万葉集は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集です。平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった『梅花の歌三十二首并せて序』をはじめ、天皇や貴族、役人や農民など様々な身分の人々が詠んだ4500以上の歌が収録されています。
原文
近江の海 夕波千鳥汝が鳴けば 心もしのに古思ほゆ
ひらがなでの読み方
あふみのうみ ゆふなみちどりながなけば こころもしのに いにしへおもほゆ
現代語訳・口語訳
近江の海(琵琶湖)の夕方にたつ波の上を飛ぶ千鳥たちよ、お前が鳴くと私の心はしょぼんとして昔のことを思い出してしまうよ。
解説
この句は、柿本人麻呂によって詠まれた句です。柿本人麻呂は飛鳥時代の歌人で、山部赤人とともに歌聖と呼ばれています。
出だしの「近江の海、夕波千鳥」というたった8文字で、「夕焼け空の下に波が立っている湖のほとりで、鳥が鳴いている」というイメージを読み手は想像することができます。また、「お前の泣き声を聞くことで古のことを思う」と人麻呂は詠んでいますので、鳥たちが楽しく遊んでいる様ではなく、哀愁ただよう鳴き方をしているということも安易に想像することができます。このテクニックが柿本人麻呂が歌聖として称賛された理由でしょう。
単語
【近江の海】
諸説あるようですが、近江の湖とは琵琶湖のことを指していると言われています。「近江=淡海」をかけているとも考えられます。
【汝】
「汝」は千鳥を指しています。
【しのに】
「しのに」は「心がしおれる様」を意味する言葉です。ここでは現代っぽく"しょぼんとして"と訳しました。
【古】
飛鳥時代には、大化の改新で活躍した天智天皇(中大兄皇子)が近江に都(近江宮)を築きました。この天智天皇の活躍した時代のことを「古」として思っています。
品詞分解
※名詞は省略しています。
近江 | ー |
の | 格助詞 |
海 | ー |
夕波千鳥 | ー |
汝 | 代名詞 |
が | 格助詞 |
鳴け | カ行四段活用「なく」の已然形 |
ば | 接続助詞 |
心 | ー |
も | 係助詞 |
しのに | 副詞 |
古 | ー |
思ほゆ | ヤ行下二段活用「おもほゆ」の終止形 |
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