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枕草子 原文全集「弘徽殿とは」 |
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著作名:
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弘徽殿とは、閑院の左大将の女御をぞきこゆる。その御方に、うちふしといふもののむすめ、左京といひてさぶらひけるを、源中将語らひてなむ、と人々笑ふ。
宮の職におはしまいしに参りて、
「時々は宿直(とのゐ)などもつかうまつるべけれど、さべきさまに女房などももてなし給はねば、いと宮仕へおろかにさぶらふこと。宿直所をだにたまはりたらば、いみじうまめにさぶらひなむ」
といひゐ給へれば、人々、
「げに」
などいらふるに、
「まことに、人はうちふしやすむ所のあるこそよけれ。さるあたりには、しげう参り給ふなるものを」
とさしいらへたりとて、
「すべてものきこえじ。方人とたのみ聞ゆれば、人のいひふるしたるさまにとりなし給ふなめり」
など、いみじうまめだちて怨じ給ふを、
「あなあやし。いかなることをか聞こえつる。さらに聞きとがめ給ふべきことなし」
などいふ。かたはらなる人をひきゆるがせば、
「さるべきこともなきを、ほとほりいで給ふ、やうこそはあらめ」
とて、はなやかに笑ふに、
「これもかのいはせ給ふならむ」
とて、いとものしと思ひ給へり。
「さらに、さやうのことをなむいひ侍らぬ。人のいふだににくきものを」
といらへて、引き入りにしかば、後にもなほ、
「人に恥ぢがましきこといひつけたり」
とうらみて、
「殿上人わらふとて、いひたるなめり」
とのたまへば、
「さては、一人をうらみ給ふべきことにもあらざなるに、あやし」
といへば、その後はたえてやみ給ひにけり。
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