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第一次世界大戦はなぜ起こったのか 2 イギリスの外交政策と日露戦争 |
著作名:
ピアソラ
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イギリスと露仏同盟
三国同盟と露仏同盟の対立という状況にもかかわらず、イギリスは「光栄ある孤立」を続けていました。
なぜなら、イギリスはロシアとは南下政策、フランスとはアジアやアフリカの植民地をめぐって対立してたからです。
ロシアとの対立は、植民地インドの防衛という観点からでした。
ロシアは南下政策の一環としてアフガニスタンを狙っていたんですが、イギリスとインドを結ぶ重要な地域だったため、1881年にロシアに先んじてイギリスはアフガニスタンを保護国化しています。このように、イギリスとロシアはアフガニスタンやカジャール朝ペルシアといった国々をめぐって対立したんです。
一方フランスとの対立は、アジアやアフリカで起こります。
まず、アジアでの対立です。インドをめぐって争っていた両国でしたが、1858年にイギリスがインド全域を植民地にすると、フランスのナポレオン3世は、現在の東南アジア地域に進出します。
1887年に、ヴェトナムやカンボジアを占領し、フランス領インドシナ連邦を成立させます。
イギリスはこれに対抗してアラウンパヤー朝ビルマを占領、植民地化します。
タイ王国を緩衝地帯として独立国のまま残し、英仏は東アジアで対立を深めていきました。
(イギリスとフランスによる植民地化)
アフリカの植民地政策では、縦断政策をとるイギリスと、横断政策をとるフランスがそれぞれ対立します。
イギリスがとった縦断政策とは、エジプトとケープ植民地を結ぶ地域を占領しようとするアフリカ進出政策で、一方のフランスの横断政策は、西アフリカからサハラ地域を横断して、ジプチや東の島国マダガスカルまでを繋げようとする政策でした。
(アフリカ分割の勢力図)
イギリスとドイツの対立
このころ、イギリスとドイツの関係も悪化していきます。
1898年、ヴィルヘルム2世の新航路政策(世界政策)を実現するために、海軍の軍備拡張をすすめる海軍法が制定されます。
この法律の制定後、ドイツは軍艦をどんどん建造するようになります。
この動きに海軍国家イギリスは反発し、自国も軍艦を増強したので、建艦競争という状況が生じました。
3B政策VS3C政策
さらに翌年の1899年、ドイツはトルコからバグダード鉄道の敷設権を獲得します。
バグダード鉄道の計画は、トルコのコニアから、バグダード、ペルシア湾へと続く長大な鉄道を敷設するというものでした。
この計画でドイツは、ベルリン(Berlin)・ビザンティウム<イスタンブルの旧名>(Byzantium)・バグダード(Baghdad)を結ぶ広大な地域への進出を目指すようになります。
これを、3つの都市の頭文字から3B政策と言います。
一方イギリスは、カイロ(Cairo)・ケープタウン(Cape Town)・カルカッタ(Calcutta)を結ぶ3C政策でこれに対抗したため、ドイツとの対立が決定的になっていきます。
ファショダ事件と英仏協商の成立
世界各地で争っていたイギリスとフランスですが、ある事件をきっかけに急速に関係が良くなります。
アフリカの縦断政策と横断政策は、アフリカの植民地支配を進める上で、イギリスとフランスがぶつかると考えられていました。
1898年、スーダンのファショダという場所で、両軍が衝突しました。
これをファショダ事件と言うんですが、この時、イギリス・フランス間で戦争が起こってもおかしくなかったんです。ところがフランスが譲歩したことで、スーダンはイギリスの支配下に入り、戦争も回避されました。
ファショダ事件の歴史的意義はそれだけではありません。
この事件が平和的に解決したことから、イギリスとフランスの対立が急速に解消されていきます。
1904年、イギリスがエジプトの、フランスがモロッコの優越権を相互に認めるという英仏協商が締結されることになりました。
これで、イギリスの敵はドイツとロシアになりました。
日露戦争とロシア革命
少し話は前後しますが、極東地方でも、帝国主義国家間の対立が深まっていました。
1900年、中国で義和団事件(北清事変)が起こります。
これは、義和団という結社が、清朝を助け、列強諸国を中国から排斥しようとして起こった出来事でした。
義和団事件には8カ国が共同出兵し、義和団とそれに与した清朝軍を撃破していきます。
(出兵した8カ国の軍人たち:左からイギリス・アメリカ・オーストラリア・イギリス領インド・ドイツ・フランス・オーストリア=ハンガリー帝国・イタリア・日本)
この事件後、ロシア軍は満州を占領して中国に残り、朝鮮半島にも進出していきます。
この動きに、伝統的にロシアの南下政策を嫌うイギリスが警戒しますが、同じ頃南アフリカでブーア戦争を起こしていたため、極東に派遣できる軍隊が残っていませんでした。
そのため、イギリスは「光栄ある孤立」を捨て、1902年、同じくロシアの南下政策に抵抗し、中国に進出しようとしていた日本と日英同盟を結ぶことになります。
そして、1904年には日露戦争が勃発。旅順の攻防戦や奉天会戦、日本海海戦など、日本はロシアに勝利を重ねます。
(日露戦争の推移)
1905年1月22日、ロシア帝国の首都ペテルブルクで民衆のデモに対して、皇帝の軍隊が発砲した血の日曜日事件が発生。この事件をきっかけに、第一次ロシア革命が起こり、ロシアは戦争どころではなくなっていきます。
(血の日曜日事件)
一方の日本も、大国ロシアとの戦争で国力が疲弊していたため、両国はアメリカのセオドア=ルーズヴェルトの仲介によってポーツマス条約を締結し、日露戦争は終結します。
1905年までの国際関係を図にすると以下のようになります。
(1905年までの国際関係)
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