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18_80 西アジア・地中海世界の形成 / キリスト教の成立と発展

キリスト教とは わかりやすい世界史用語1188

著者名: ピアソラ
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キリスト教とは

キリスト教は、ナザレのイエス(イエス=キリスト)の生涯、教え、死、そして復活に基づいて成立した、アブラハムの宗教の一つであり、世界最大の宗教です。その信者はクリスチャンと呼ばれ、現在、世界人口の約3分の1にあたる24億人以上が存在すると推定されています。キリスト教は一神教であり、その中心には唯一の神への信仰がありますが、多くの宗派ではこの神が三位一体、すなわち父なる神、子なる神イエス・キリスト、聖霊として理解されています。聖典は聖書であり、これは旧約聖書と新約聖書の二部から構成されています。キリスト教はその2000年以上の歴史の中で、西洋文明をはじめとする世界の文化、芸術、法律、社会制度、倫理観などに計り知れない影響を与えてきました。

キリスト教信仰の中核をなすのは、イエス・キリストという人物です。クリスチャンは、イエスが神の子であり、待望されていたメシア(ヘブライ語で「油注がれた者」、ギリシャ語で「キリスト」)であると信じています。イエスの生涯に関する主要な情報源は、新約聖書に含まれる四つの福音書、すなわちマタイ、マルコ、ルカ、ヨハネによる福音書です。これらによれば、イエスは紀元前後の時期に、ローマ帝国支配下のユダヤ地方、ベツレヘムで処女マリアから生まれ、ナザレで育ちました。成人してからの約3年間、彼は主にガリラヤ地方で宣教活動を行い、神の国の到来、悔い改め、神への愛、そして隣人への愛を説きました。特に「汝の敵を愛せよ」という教えは画期的なものでした。また、多くの奇跡、例えば病人の治癒や自然現象の制御などを行ったとされています。イエスは12人の弟子、すなわち使徒を選び、彼らと共に活動しました。彼の教えは、当時のユダヤ教の律法主義的な解釈とは一線を画し、律法の精神、すなわち神と人への愛を強調するものでした。彼はしばしばたとえ話(パラブル)を用いて、神の国の本質や神の性質について教えました。

キリスト教神学における中心的な教義の一つは、イエスが完全に神であり、同時に完全に人間であるという神人としての性質です。これは、後の公会議、特に451年のカルケドン公会議で確立された教義であり、イエスは神の本質と人間の本質を併せ持ちながら、それらが混同されることも分離されることもなく、一つの位格(ペルソナ)において結合していると理解されています。クリスチャンは、イエスが神の子として父なる神と永遠の昔から共に存在し、人類を罪から救うために人としてこの世に来られたと信じています。

福音書によれば、イエスはユダヤ教指導者たちとの対立を深め、最終的にローマ総督ポンティウス・ピラトゥスのもとで、十字架刑によってエルサレムで処刑されました。この出来事は、人類の罪を贖うための犠牲であったとキリスト教では理解されており、これを贖罪と呼びます。しかし、キリスト教信仰の根幹をなすのは、イエスが死後三日目に復活したという出来事です。クリスチャンは、イエスの復活が、彼が神の子であること、そして彼の死が罪に対する勝利であったことの証明であると信じています。復活はまた、信じる者すべてに与えられる永遠の命の希望の基盤となっています。復活後、イエスは弟子たちの前に現れ、教えを広めるよう命じ、これを大宣教命令と呼びますが、その後天に昇った(昇天)とされています。

したがって、イエス・キリストは、キリスト教において単なる預言者や偉大な教師以上の存在として捉えられています。彼は救い主(Savior)、主(Lord)、神の子(Son of God)、メシア(Messiah/Christ)として崇拝の対象です。彼への信仰を通じてのみ、人間は罪から解放され、神との和解を得て、永遠の命に入ることができると信じられています。

聖書はキリスト教の聖典であり、神の霊感によって書かれた、信仰と実践に関する最高の権威を持つ書物であると信じられています。聖書は大きく分けて旧約聖書(Old Testament)と新約聖書(New Testament)の二つの部分から構成されます。旧約聖書は元々ユダヤ教の聖典(タナハ)であり、キリスト教においても神の啓示として受け入れられています。その内容は、天地創造、人類の起源、イスラエルの民の選びと歴史、律法(モーセ五書)、預言者たちの言葉、詩篇や知恵文学などが含まれます。キリスト教の理解では、旧約聖書はイエス・キリストの到来を預言し、その準備をするものであり、新約聖書において成就されると解釈されます。ただし、含まれる文書の範囲、すなわち正典については、カトリック教会や東方正教会とプロテスタント諸派の間で若干の違いがあり、前者は「第二正典」または「アポクリファ」と呼ばれる文書を含みます。

一方、新約聖書はキリスト教固有の聖典であり、イエス・キリストの生涯と教え、初代教会の成立と発展、使徒たちの書簡、そして終末に関する預言(ヨハネの黙示録)が記されています。中心となるのは四つの福音書で、これらはイエスの言行録と彼の死、復活を伝えています。「使徒言行録」は、イエスの昇天後、聖霊が降臨し、使徒たちが教会を設立し、福音が広まっていく様子を描いています。パウロをはじめとする使徒たちが各地の教会や個人に宛てた書簡は、キリスト教神学の基礎を形成し、信仰生活に関する実践的な指導を与えています。

ほとんどのクリスチャンは、聖書が誤りなき神の言葉である、あるいは少なくとも信仰と実践において誤りがないと信じており、生活のあらゆる側面における導きとなると考えています。ただし、聖書の解釈方法については、字義通りの解釈を重んじる立場から、歴史的・文化的な文脈を考慮する批評的な解釈まで、宗派や個人の間で幅があります。プロテスタント宗教改革においては、「聖書のみ」(Sola Scriptura)が重要な原則とされ、聖書が教会伝承や教皇よりも上位の権威を持つとされました。これに対し、カトリック教会や東方正教会では、聖書と聖伝(Sacred Tradition)が共に神の啓示の源泉として重視されます。

キリスト教の教義

キリスト教には、多くの宗派に共通する基本的な教義が存在します。まず、キリスト教は厳格な一神教です。この唯一の神は、人格的であり、全知全能、遍在、永遠、不変、完全に善であり、愛であり、義であると信じられています。神は宇宙と全てのものの創造主であり、維持者です。

多くのキリスト教宗派、すなわちカトリック、東方正教、プロテスタントの主流派は、唯一の神が三つの位格(ペルソナ)、すなわち父なる神(Father)、子なる神(Son、イエス・キリスト)、聖霊(Holy Spirit)において存在するという三位一体(Trinity)の教義を受け入れています。これは、神が「一にして三、三にして一」であるという神秘的な教えです。父は主に創造主、子は受肉し人類を救済する者、聖霊は信者の内に住み、力づけ、導く者として理解されますが、三つの位格は本質において等しく、永遠であり、共に唯一の神です。この教義は、聖書に直接的な用語としては現れませんが、聖書全体の証言と初代教会の経験に基づいて、第4世紀の公会議、特にニカイア公会議とコンスタンティノープル公会議で明確に定義されました。

キリスト教はまた、神が自身の意思によって、無から(ex nihilo)宇宙と全てのものを創造したと教えます。創世記によれば、神は6日間で天地を創造し、最後に自分のかたちに似せて人間、すなわちアダムとエバを創造しました。創造は神の栄光を現すものであり、本質的に「非常に良かった」とされています。

しかし、創世記によれば、最初の人間アダムとエバは神の命令に背き、禁断の木の実を食べることによって罪を犯しました。この出来事は「堕落」と呼ばれ、結果として人間は神との本来の関係を失い、死と苦しみが世界に入り込んだと教えられます。この「原罪」の結果、全ての人類は罪を犯す傾向を持ち、神から離れた状態にあるとされます。罪とは、単なる悪い行いだけでなく、神に背を向け、自己中心的な生き方をする状態そのものを指します。

キリスト教の中心的なメッセージは、神が人類を罪とその結果から救う道を備えたということです。この救済(Salvation)は、イエス・キリストの生涯、死、復活を通して成し遂げられました。イエスの十字架上の死は、人類の罪のための贖いの犠牲であり、これによって神の義が満たされ、罪が赦される道が開かれたと信じられています。これは贖罪論(Atonement)として知られます。救いは、人間の功績や努力によって得られるのではなく、神の恵み(Grace)によって与えられ、イエス・キリストへの信仰(Faith)を通して受け取るものだと教えられます。特にプロテスタントでは「信仰のみによる義認」(Sola Fide)としてこの点が強調されます。救われた結果、信者は神との和解、罪の赦し、聖霊の内住、そして永遠の命を得ます。

三位一体の第三の位格である聖霊(The Holy Spirit)は、神の力であり、信者の内に住んで働くと信じられています。新約聖書によれば、イエスの昇天後、ペンテコステの日に弟子たちの上に聖霊が降り、教会が誕生しました。聖霊は、人々をキリストへと導き、罪を自覚させ、新生(再生)させ、信者を聖化、すなわちキリストに似た者へと変え、賜物(カリスマ)を与えて教会に仕えさせ、聖書を理解させ、祈りを助け、慰めと導きを与えるとされています。ペンテコステ派やカリスマ運動では、特に聖霊の働きと賜物、例えば異言、預言、癒しなどが強調されます。

教会

教会(The Church、ギリシャ語でエクレシア)は、キリストを信じる人々の共同体を指します。それは建物そのものではなく、信者の集まりが教会です。新約聖書では、教会は「キリストのからだ」や「聖霊の宮」とも呼ばれます。この言葉は、普遍的、すなわち全世界的な教会と、地域ごとの具体的な教会(会衆)の両方の意味で使われます。教会は、神を礼拝し、聖書を学び、聖餐式を行い、交わり(フェローシップ)を持ち、福音を宣べ伝え、社会に奉仕する役割を担います。教会の組織構造や統治形態は宗派によって大きく異なり、例えばカトリックの教皇制、監督制、長老制、会衆制などがあります。

キリスト教のはじまり

キリスト教は、歴史には始まりとしての創造と終わりがあると教えます。終末論(Eschatology)は、死、キリストの再臨(Second Coming)、死者の復活、最後の審判(Final Judgment)、そして神の国の完成に関する教えです。多くのクリスチャンは、イエス・キリストが栄光のうちに再び地上に来られ、生者と死者を裁き、悪を滅ぼし、新しい天と新しい地を創造すると信じています。信じる者には永遠の命、すなわち神との永遠の交わりが、信じない者には永遠の滅び、すなわち神からの永遠の分離が定められているとされます。終末の具体的な時期や出来事の順序については、様々な解釈が存在します。

キリスト教の歴史は、1世紀のローマ帝国領ユダヤ地方で、ユダヤ教の一派として始まりました。イエス・キリストの死と復活の後、彼の弟子たち、すなわち使徒たちは、イエスこそがメシアであり、神の子であるというメッセージ、すなわち福音を宣べ伝え始めました。ペンテコステの日に聖霊が降ったとされる出来事が、教会の実質的な始まりと見なされています。当初、信者はユダヤ人のみでしたが、使徒パウロ、元はキリスト教徒を迫害していたが劇的な回心を経て異邦人への使徒となった人物などの働きにより、急速に非ユダヤ人(異邦人)の間にも広がっていきました。

初期の数世紀間、キリスト教はしばしばローマ帝国政府から疑いの目で見られ、断続的に迫害を受けました。ネロ帝やディオクレティアヌス帝による迫害は特に激しいものでした。しかし、迫害にもかかわらず、キリスト教は帝国内の都市部を中心に、社会の様々な階層に浸透していきました。この時代には、新約聖書の正典が徐々に形成され、基本的な教義が議論され、確立されていきました。また、司教(監督)を中心とする教会組織が発展しました。

4世紀初頭、ローマ皇帝コンスタンティヌスはキリスト教に好意的になり、313年のミラノ勅令で信仰の自由を認めました。彼は自身も後に洗礼を受けたとされ、キリスト教の発展に大きく寄与しました。325年には、イエスの神性をめぐるアリウス派論争を解決するためにニカイア公会議を召集しました。最終的に、380年にテオドシウス帝によってキリスト教はローマ帝国の国教と定められました。これにより、キリスト教は社会の主流となり、大きな影響力を持つようになりましたが、同時に世俗化の危険も増大しました。

4世紀から8世紀にかけて、重要な神学的論争、特にキリスト論と三位一体論を解決するために、一連の全教会的な会議、すなわち公会議(Ecumenical Councils)が開催されました。ニカイア(325年)、コンスタンティノープル(381年)、エフェソ(431年)、カルケドン(451年)などの公会議は、キリスト教の基本的な信条、例えばニカイア・コンスタンティノープル信条などを確立し、異端とされた教えを排除しました。これらの公会議の決定は、後のカトリック、東方正教、プロテスタントの主流派に共通の遺産となっています。

ローマ帝国が東西に分裂した後、西のローマ教会(ラテン語圏)と東のコンスタンティノープル教会(ギリシャ語圏)の間では、言語、文化、典礼、神学、そして教会の首位権、特にローマ教皇の権威をめぐる相違が徐々に拡大していきました。この対立は、1054年に相互破門という形で頂点に達し、キリスト教世界は西方教会(後のローマ・カトリック教会)と東方教会(後の東方正教会)に恒久的に分裂しました。これは「大シスマ(東西分裂)」と呼ばれます。

中世ヨーロッパ

中世ヨーロッパでは、ローマ・カトリック教会が社会の中心となり、文化、学問、政治に絶大な影響力を持ちました。修道院制度が発展し、スコラ学などの神学が隆盛しました。しかし、教会の世俗化や腐敗に対する批判も高まりました。16世紀初頭、ドイツの神学者マルティン・ルターが、贖宥状(免罪符)の販売などに抗議し、聖書の権威と信仰による義認を強調したことから、宗教改革が始まりました。ルターの思想は急速に広まり、ジャン・カルヴァン(スイス)、フルドリッヒ・ツヴィングリ(スイス)などの改革者も登場しました。これにより、カトリック教会から分離した様々なプロテスタント教会、例えばルター派、改革派/長老派、聖公会などが成立しました。宗教改革は、ヨーロッパ社会に大きな変革をもたらし、宗教戦争や国家のあり方にも影響を与えました。カトリック教会も対抗宗教改革を行い、トリエント公会議などで教義の再確認と内部改革を進めました。

大航海時代以降、キリスト教はヨーロッパの植民地拡大と共に世界中に広まりました(宣教)。特に19世紀にはプロテスタントによる大規模な宣教活動が行われ、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどで信者が増加しました。一方、啓蒙主義、科学革命、世俗化の進展により、ヨーロッパや北米ではキリスト教の影響力が相対的に低下する傾向も見られました。20世紀には、エキュメニカル運動(教会一致運動)が起こり、分裂した諸教会の対話と協力が進められました。また、ラテンアメリカの「解放の神学」や、アフリカ、アジアにおける土着の文化と融合したキリスト教の発展など、多様な動きが見られます。近年、キリスト教の重心は、伝統的な欧米から、グローバル・サウス、すなわちアフリカ、アジア、ラテンアメリカへと移りつつあると言われています。

宗派

キリスト教は単一の組織ではなく、歴史的な経緯や神学的・実践的な違いから、多くの宗派(Denominations)に分かれています。主要なグループとしては、カトリック教会、東方正教会、プロテスタントがあります。カトリック教会は世界最大のキリスト教宗派であり、約13億人の信者がいます。ローマ教皇(Pope)を最高指導者とし、使徒ペテロの後継者と見なします。聖書と聖伝の両方を権威の源泉とし、教会の教導権(Magisterium)を重視します。七つの秘跡(サクラメント)、すなわち洗礼、堅信、聖体、ゆるし、病者の塗油、叙階、婚姻が信仰生活の中心です。マリア崇敬や聖人崇敬も特徴的であり、中央集権的な組織構造を持ち、全世界に教区が組織されています。

東方正教会は、1054年の東西分裂によりカトリック教会から分かれました。主に東ヨーロッパ、バルカン半島、中東、ロシアなどに広がっています。単一の最高指導者は置かず、コンスタンティノープル総主教を「同等者の中の第一人者」とするものの、各国の独立教会、例えばギリシャ正教会やロシア正教会などが自治を行っています。聖書と聖伝、特に最初の七つの公会議の決定を重視します。典礼(リティルギー)が非常に重要視され、イコン(聖画像)の使用が特徴的です。神学的には、神化(テオーシス)、すなわち人間が神の性質にあずかるという概念が重要です。

プロテスタントは、16世紀の宗教改革に端を発する諸教会の総称です。カトリック教会や東方正教会のような単一の組織ではなく、非常に多様な宗派が存在します。共通する原則としては、「聖書のみ」(Sola Scriptura、聖書が信仰と実践の唯一最高の規範)、「信仰のみ」(Sola Fide、救いは信仰によってのみ得られる)、「恵みのみ」(Sola Gratia、救いは神の恵みによる)などが挙げられます。主な宗派には、ルター派(Lutheranism)、カルヴァン主義/改革派/長老派(Calvinism/Reformed/Presbyterian)、聖公会(Anglicanism、カトリックとプロテスタントの中間的性格を持つとされる)、バプテスト(Baptist、信者の浸礼を主張)、メソジスト(Methodist、個人的回心と社会奉仕を強調)、ペンテコステ派(Pentecostalism、聖霊の働きと賜物を強調)、そして福音派(Evangelicalism、回心、聖書主義、宣教を重視する、宗派横断的な運動)などがあります。礼拝形式や教会統治形態も宗派によって様々です。

これら三大グループ以外にも、キリスト教から派生した、あるいは自身を原始キリスト教の回復と位置づけるグループが存在します。例として、末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)やエホバの証人などが挙げられます。これらのグループは、伝統的なキリスト教の教義、特に三位一体やキリストの神性などとは異なる独自の教えを持つことが多く、主流派からは異端と見なされることもあります。これらの宗派間には、イエス・キリストへの信仰、聖書の重要性、神の愛といった共通点も多くありますが、教義、礼拝、組織、実践において様々な相違点が存在します。20世紀以降、エキュメニカル運動を通じて、相互理解と協力を目指す対話が進められています。

キリスト教の信仰は、個人の内面にとどまらず、共同体における礼拝や様々な実践を通して表現されます。クリスチャンにとって、神への礼拝(Worship)は信仰生活の中心です。多くの場合、週に一度、特に日曜日、すなわちイエスの復活を記念する日に教会に集まって共同礼拝が行われます。礼拝の形式は宗派によって多様ですが、一般的には、祈り、賛美歌や聖歌の歌唱、聖書朗読、説教(Sermon、聖書箇所に基づくメッセージ)、献金などが含まれます。カトリックや東方正教会、聖公会などの典礼的な教会では、定められた式次第に沿って礼拝が進められます。プロテスタントの中でも、より自由な形式の礼拝を行う教会もあります。

聖餐式や聖体拝領(Sacraments/Ordinances)は、神の恵みが与えられるとされる特別な儀式です。ほぼ全ての宗派で重要視されるのは、洗礼(Baptism)と聖餐式(Eucharist / Holy Communion / Lord's Supper)です。洗礼は、キリストへの信仰を公に表明し、教会共同体に加わる儀式であり、通常、水を用いて行われます。浸礼、滴礼、灌水礼など形式は様々ですが、罪からの清め、キリストとの結合、聖霊による新生を象徴すると理解されます。幼児洗礼を行う宗派(カトリック、東方正教、聖公会、ルター派、メソジストなど)と、信仰告白後の成人洗礼のみを行う宗派(バプテスト、ペンテコステ派など)があります。聖餐式は、イエスが最後の晩餐で制定したとされる儀式で、パンとぶどう酒(またはぶどう液)を用いて行われます。イエスの体と血を象徴し、彼の犠牲を記念し、彼との交わり、信者同士の交わりを確認します。パンとぶどう酒が実際にキリストの体と血に変化すると信じるカトリックの「実体変化」の立場から、象徴的な意味合いを強調する多くのプロテスタントの立場まで、その理解は宗派によって異なります。カトリック教会では、これら二つに加えて、堅信、ゆるし(告解)、病者の塗油、叙階、婚姻の計七つを秘跡(サクラメント)としています。東方正教会も同様に七つの機密(ミスティリオン)を認めます。プロテスタントでは、洗礼と聖餐式のみをイエス自身が制定した礼典(オーディナンス)として認めることが多いです。

祈り(Prayer)は、神との個人的な対話であり、キリスト教信仰の重要な要素です。感謝、賛美、罪の告白、願い、他の人のためのとりなしなど、様々な形で行われます。決まった時間に祈る、聖書を読みながら祈る、自発的に祈るなど、形式は自由です。主イエスが教えたとされる「主の祈り」は、多くのクリスチャンによって唱えられています。

社会への影響

キリスト教には、イエス・キリストの生涯や教会の出来事を記念する重要な祝祭日(Festivals/Holy Days)があります。最も重要なのは、イエスの降誕を祝うクリスマス(Christmas、12月25日)と、イエスの復活を祝うイースター(Easter、春分の後の最初の満月の次の日曜日)です。その他、イースター前の準備期間であるレント(Lent、四旬節)、聖霊降臨を記念するペンテコステ(Pentecost、聖霊降臨祭)、イエスの昇天を記念する昇天日(Ascension Day)などがあります。

キリスト教の倫理と道徳(Ethics and Morality)は、神への愛と隣人への愛を基本的な原則とします。旧約聖書のモーセの十戒や、新約聖書のイエスの「山上の説教」(マタイ福音書5-7章)は、具体的な行動規範を示しています。正直、謙遜、赦し、憐れみ、平和、正義、純潔などの徳が奨励されます。クリスチャンは、信仰が具体的な行動や生き方となって現れるべきだと考え、個人的な道徳性だけでなく、社会的な正義や貧しい人々への奉仕、すなわち慈善活動にも取り組むことが期待されます。

キリスト教は、その発祥以来、世界の歴史、文化、社会に広範かつ深遠な影響を与えてきました。特に西洋文明において、キリスト教は、ローマ帝国後期から中世を経て近代に至るまで、文化、思想、芸術、社会制度の形成に決定的な役割を果たしました。法律における教会法の影響、哲学におけるスコラ学や自然法思想、政治思想における王権神授説から社会契約論への影響、大学の設立、そして西暦という暦の採用などにその影響が見られます。

教育と医療の分野でも、キリスト教の貢献は顕著です。中世の修道院は学問の中心地であり、写本の保存や教育に貢献しました。近代以降も、多くのキリスト教団体が学校や大学を設立し、教育の普及に努めてきました。同様に、病人や貧しい人々へのケアは初期キリスト教からの伝統であり、多くの病院や福祉施設の設立・運営にキリスト教が関わってきました。

キリスト教の倫理観、すなわち人間の尊厳、平等、正義の概念は、様々な社会改革運動の原動力となってきました。例えば、18世紀から19世紀にかけての奴隷制度廃止運動におけるウィリアム・ウィルバーフォースなどの活動、刑務所改革、労働者の権利擁護、禁酒運動、女性参政権運動、そして20世紀のアメリカ公民権運動におけるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師などの指導において、キリスト教の信仰に基づく動機づけが大きな役割を果たしました。

芸術と建築の分野においても、キリスト教は計り知れない影響を与えています。絵画、彫刻、音楽、文学、建築など、あらゆる芸術分野にインスピレーションを与えてきました。中世の壮大なゴシック様式の大聖堂(カテドラル)、ルネサンス期のミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチなどによる宗教画、バッハやヘンデルなどのバロック音楽、数多くの聖歌や宗教文学は、キリスト教信仰の表現であり、西洋文化遺産の重要な一部となっています。

キリスト教の世界的な影響は、宣教活動や移住を通じて、世界中に広がり、各地域の文化と相互に影響を与え合っています。ラテンアメリカ、アフリカ、アジアなどでは、キリスト教が土着の文化や宗教と融合し、独自の表現形態を生み出しています。一方で、キリスト教の拡大が植民地主義と結びついていた歴史や、異文化との摩擦といった負の側面も指摘されています。現代においても、キリスト教は世界各地で人々の価値観、倫理観、社会活動に影響を与え続けています。
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『世界史B 用語集』 山川出版社

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