太陽神ラーとは
古代エジプトの太陽神ラーは、エジプト神話の中で最も重要な神の一人であり、世界の創造者としても信仰されていました。ラーはエジプト語で「太陽」を意味し、彼は自ら太陽そのものであると考えられていました。彼は昼間は天空を太陽の船で渡り、夜間は冥界を通って翌日の再生のために邪悪な蛇アペプと戦うとされていました。
ラーは最初の神であり、自ら自分を創造したとされています。彼は混沌の海から原初の丘に現れ、自分から他の八柱の神々を生み出しました。ラーはまた、自分の涙や汗から人間を作ったとも言われており、エジプト人は自分たちを「ラーの牛」と呼んでいました。人間がラーに反乱したとき、彼は自分の炎の目である女神セクメトを送って多くの人間を殺したという伝説もあります。
ラーは太陽神としての役割だけでなく、秩序や王権、天空などの神としても崇拝されていました。ラーはハヤブサの頭を持つ姿で描かれることが多く、天空の神ホルスと共通点がありました。時には、ラーとホルスはラー・ホルアクティとして合一されることもありました。ラーの信仰はオン(ヘリオポリス)という都市を中心に広まりました。オンはギリシア語で「太陽神の都市」という意味です。第四王朝(紀元前2575年頃~紀元前2465年頃)から、王は「ラーの子」という称号を持ち、ラーは王の守護神となりました。ラーはまた、真理の女神マアトの父として、宇宙の正義と平衡の源とされました。
ラーは他の神々とも結びつけられることが多く、ラー・ハラクティ、アメン・ラー、ソベク・ラー、クヌム・ラーなどの名前が生まれました。他の神々の影響もラーに及びました。例えば、ラー・ハラクティとしてのラーのハヤブサの頭は、ホルスとの関連から生まれたものです。新王国時代(紀元前1539年~紀元前1075年頃)には、ラーの信仰は最盛期を迎えました。この時代には、アメンという神が最高神となり、アメン・ラーとしてラーと合一しました。また、オシリスという冥界の支配者とラーとの関係も調和され、王の葬儀の文書では、二柱の神が同一視されることもありました。
ラーの信仰は約2000年にわたって続きましたが、キリスト教の影響によって衰退しました。しかし、ラーはエジプトの宗教において不可欠な神であり、その力と神秘は今でも多くの人々に魅力を与えています。