manapedia
更新日時:
十八史略『荊軻』(軻至咸陽〜)書き下し文・現代語訳と解説
著作名: 走るメロス
151,420 views

現代語訳(口語訳)

軻咸陽に至る。
荊軻は咸陽に到着しました。

秦王政大いに喜び之を見る。
秦の王である政は大変喜んで、これ(荊軻)に会いました。

軻図を奉じて進む。
荊軻は(督亢の)地図を捧げて前に進み出ました。

図窮まりて匕首見(あらは)はる。
地図を広げ終えようとするときに、(巻物状の地図の中に隠しておいた)匕首が表れました。

王の袖を把りて之を揕(さ)す。
(荊軻)は王の袖をとって刺そうとしました。

未だ身に及ばず。
しかしまだ王の体には届きません。

王驚き起ちて袖を絶つ。
王は驚いて立ち上がり袖を破りました。

軻之を逐ふ。
荊軻は王を追います。

柱を環(めぐ)りて走る。
(二人は)柱をぐるぐると走り回りました。

秦の法に群臣の殿上に侍する者は、尺寸(せきすん)の兵を操るを得ず。
秦の法では、家臣が王宮に登城するときは、わずかな武器を持つことも許されていませんでした。

左右手を以て之を搏(う)つ。
(そのため)側近たちは素手で荊軻のことを殴りました。

且つ曰はく、
そして言うことには、

「王剣を負へ。」と。
「王様、剣を背負ってください。」と。


遂に剣を抜きて其の左股を断つ。
(王は)とうとう剣を抜いて荊軻の左足を切りました。

軻匕首を引きて王に擿つ。
荊軻は匕首を引き寄せて王に投げつけました。

中(あ)たらず。
(しかし)あたりませんでした。

遂に体解して以て徇(との)ふ。
とうとう(秦王は荊軻の)体をばらばらにして見せしめにしました。

秦王大いに怒り、益(ますます)兵を発して燕を伐つ。
秦王はたいへん怒り、よりいっそう兵を送って燕を攻撃しました。

喜丹を斬りて以て献ず。
(燕の王であった)喜は(荊軻を仕向けた)丹を斬り殺し(秦)に献上しました。

後三年、秦兵喜を虜にし、遂に燕を滅ぼして郡と為す。
その三年後、秦の兵は喜を捕虜とし、ついに燕をを滅ぼして(秦の)郡としたのです。

単語・文法解説

未及身「未」は再読文字。「いまだ〜(せ)ず」と読み、「まだ〜(し)ない」と訳す
尺寸兵「尺寸」は「わずかの」、「兵」は「武器」を意味する
見せしめること




1ページ
前ページ
2/2
次ページ


このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。