ムガル帝国がインド亜大陸を統治した時代は、インドの歴史において政治的、文化的、そして経済的に大きな変革がもたらされた時期として知られています。特に、帝国の基盤を支えた農村経済は、この時代に著しい発展と変化を遂げました。帝国の統治機構は、農村社会の隅々にまで影響を及ぼし、土地所有の形態、税制、農業生産、そして商業活動のあり方を根底から変えました。

ムガル帝国の統治システムは、中央集権的な権力構造を特徴としており、その権力は農村社会の末端にまで及んでいました。皇帝を頂点とする統治機構は、農業生産から得られる余剰を効率的に徴収し、それを帝国の維持・拡大のための財源とすることを目的としていました。この目的を達成するために、帝国は精緻な土地税制度を構築し、官僚機構を通じて農村を直接的、あるいは間接的に管理下に置きました。
帝国の農村支配の根幹をなしたのは、マンサブダーリー制とジャギールダーリー制という二つの制度でした。マンサブダーリー制は、帝国の官僚や軍人に「マンサブ」と呼ばれる位階を与える制度であり、その位階に応じて給与が定められていました。給与の支払いは、現金で行われる場合もありましたが、多くは「ジャギール」と呼ばれる特定の土地からの徴税権を付与するという形で行われました。この徴税権を与えられたマンサブダールは「ジャギールダール」と呼ばれ、自らが割り当てられた土地（ジャギール）の農民から税を徴収する責任を負いました。
ジャギールダーリー制は、帝国の財政と軍事機構を支える上で極めて重要な役割を果たしました。しかし、ジャギールダールは特定の土地の所有者ではなく、あくまで徴税権を持つに過ぎませんでした。さらに、彼らは頻繁に転勤を命じられたため、特定の地域に長期間留まることは稀でした。この制度は、ジャギールダールが地方で独自の権力基盤を築くことを防ぎ、中央集権体制を維持する上で効果的でした。一方で、頻繁な転勤は、ジャギールダールが担当地域の農業生産の長期的な発展に投資する意欲を削ぐという負の側面も持っていました。多くのジャギールダールは、短期的な視点から可能な限り多くの税を徴収することに集中し、灌漑施設の整備や農地の改良といった長期的な投資を怠る傾向があったのです。
一方で、農村社会には古くから存在する在地領主層、すなわちザミーンダールが存在しました。ザミーンダールは、世襲的な権利を持つ地域の有力者であり、多くの場合、広大な土地を直接支配していました。彼らは自らの領地内の農民から地代を徴収し、その一部を帝国の税として納める役割を担っていました。ムガル帝国は、これらの在地勢力を完全に排除するのではなく、統治機構の末端に組み込むことで、広大な領土を効率的に支配しようとしました。ザミーンダールは、徴税の代行者として帝国に協力する見返りとして、自らの領地に対する一定の支配権と、徴収した税の一部を自らの収入とすることを認められていました。
このように、ムガル時代の農村は、皇帝から派遣されたジャギールダールと、地域に根差したザミーンダールという二重の支配構造の下に置かれていました。両者の関係は常に協力的であったわけではなく、時には徴税権や支配権を巡って対立することもありました。しかし、この複雑な支配構造こそが、ムガル帝国の農村経済の特質を形作る上で決定的な役割を果たしたのです。




ムガル帝国の農村経済を理解する上で、アクバル帝の治世下で実施された土地税制度の改革は避けて通れません。この改革は、トダル・マル財務大臣の主導の下で行われ、「ザプト制」として知られています。ザプト制の目的は、恣意性を排除し、公平かつ合理的な基準に基づいて土地税を徴収することにありました。
この制度の根幹をなしたのは、徹底した土地測量でした。帝国は、標準化された測定器具を用いて農地を正確に測量し、その面積を記録しました。次に、土地はその肥沃度や灌漑の有無によって複数の等級に分類されました。そして、過去10年間の各等級の土地における作物ごとの平均収穫量と平均価格が算出され、それに基づいて税率が決定されました。税額は、原則として平均収穫量の3分の1と定められ、現金で納付することが義務付けられました。
このザプト制の導入は、農村経済に多大な影響を及ぼしました。第一に、税額が生産高に基づいて合理的に算定されるようになったことで、農民の税負担に関する予測可能性が高まりました。これにより、農民は自らの生産計画を立てやすくなり、農業生産への意欲が刺激されたと考えられます。第二に、税の現金納付が義務付けられたことは、農村経済の貨幣化を強力に推進しました。農民は、収穫した農産物を市場で販売し、現金を手に入れなければならなくなりました。これにより、農産物の商品化が進み、農村と都市を結ぶ市場経済が活性化したのです。
しかし、ザプト制がムガル帝国全土で一様に実施されたわけではありませんでした。この精緻な制度を運用するためには、高度な行政能力と測量技術が必要であり、帝国の中心部である北インドの平原地帯では比較的よく機能しましたが、辺境地域や地形が複雑な地域では、従来の慣行に基づいた徴税方法が継続されることも少なくありませんでした。例えば、収穫物を領主と農民で直接分配する「バターイー」と呼ばれる制度や、作物の種類ごとに定額の税を課す「ナサク」と呼ばれる制度が併存していました。
ザプト制は、その合理性にもかかわらず、いくつかの課題も抱えていました。10年間の平均値に基づいて税額が決定されたため、豊作の年には農民にとって有利でしたが、不作や災害に見舞われた年には、固定された税額が過酷な負担となる場合がありました。帝国は、このような場合に備えて税の減免措置を設けていましたが、その適用は必ずしも迅速かつ公平に行われたわけではありませんでした。
また、税の現金納付は、農民を市場経済の変動に直接晒すことにもなりました。農産物の価格が下落すれば、農民は税を納めるためにより多くの収穫物を売却しなければならず、その生活は不安定になりました。この過程で、多くの農民が商人や高利貸しへの依存を深めていったことも指摘されています。税を支払うための現金を借り入れ、その返済のために収穫物を安値で手放さざるを得ないという悪循環に陥る農民も少なくありませんでした。
それでもなお、ザプト制を中心とするムガル帝国の土地税制度は、インドの農村経済に大きな構造変化をもたらしました。それは、農業生産を刺激し、農産物の商品化と貨幣経済の浸透を促進することで、農村経済の活発化に大きく貢献したのです。

ムガル帝国時代は、インドの農業生産が著しく拡大した時期でもありました。この拡大は、耕作地の増加と農業技術の改良という二つの側面から支えられていました。
帝国の安定と人口の増加は、新たな土地を開墾する動きを活発化させました。ムガル政権は、荒蕪地の開墾を奨励し、開墾者に対しては数年間の免税措置などの優遇策を講じました。これにより、ガンジス川流域の平野部をはじめとする各地で森林が伐採され、広大な農地が切り開かれました。特に、ザミーンダールや村の有力者たちは、自らの収入を増やすために積極的に開墾を主導し、労働力を組織して新たな村落を形成していきました。
農業技術の面では、既存の技術が改良され、普及していきました。インドの農業は、古くからモンスーンの雨に大きく依存していましたが、ムガル時代には灌漑施設の重要性が一層認識されるようになりました。帝国や地方の支配者たちは、運河の建設や修復、貯水池や井戸の掘削といった灌漑事業に投資しました。特に、シャー・ジャハーン帝の時代に建設された西ヤムナー運河の修復と拡張は、デリー周辺地域の農業生産を飛躍的に向上させたとされています。これらの灌漑施設は、乾季における耕作を可能にし、水不足による不作のリスクを軽減する上で重要な役割を果たしました。
農具に関しても、いくつかの改良が見られました。鉄製の刃を持つ木製の鋤は広く普及しており、牛を動力として土地を耕す光景は一般的でした。また、種を効率的に蒔くための播種機も一部の地域で使用されていました。水量の多い井戸から水を汲み上げるためのペルシア水車は、特にパンジャーブ地方やシンド地方で普及し、灌漑農業の効率を大いに高めました。
この時代には、新たな作物の導入も農業生産の多様化に貢献しました。アメリカ大陸からもたらされたトウモロコシ、タバコ、ジャガイモ、トマト、トウガラシといった作物が、16世紀から17世紀にかけてインドに伝来し、各地で栽培されるようになりました。特にタバコは、短期間でインド全土に広まり、重要な換金作物となりました。これらの新しい作物は、既存の食料供給を補完し、農民の収入源を多様化させる効果をもたらしました。
しかし、ムガル時代の農業技術の発展は、革命的なものではなく、漸進的な改良の積み重ねであったと評価されています。基本的な農法は伝統的なものであり、生産性の飛躍的な向上をもたらすような技術革新は限定的でした。農業生産の拡大は、主に耕作面積の増加、すなわち「水平的拡大」に依存していたのです。それでも、灌漑の普及や新大陸作物の導入は、農業生産の安定化と多様化に大きく貢献し、増加する人口を支え、活発化する商業活動の基盤を築きました。

ムガル帝国の土地税制度、特に税の現金納付の原則は、農村経済における農産物の商品化を強力に推進しました。農民は、自らの生産物の一部を市場で販売し、納税のための現金を手に入れる必要に迫られました。このことは、自給自足的な性格が強かった従来の農村経済を、市場経済へと深く結びつける契機となりました。
商品化の波は、米や小麦といった基本的な食料作物だけでなく、より高い価格で取引される換金作物の生産を奨励しました。綿花、藍、ケシ（アヘンの原料）、サトウキビ、タバコ、香辛料などは、代表的な換金作物として各地で盛んに栽培されました。これらの作物は、国内の都市部の需要を満たすだけでなく、インド洋を越えて遠くヨーロッパや東南アジア、中東へと輸出される重要な商品でもありました。
例えば、ベンガル地方やグジャラート地方で生産される高品質な綿織物は、世界中の市場で高い評価を得ていました。その原料となる綿花の栽培は、デカン高原をはじめとする広大な地域で農民の重要な収入源となっていました。また、インド産の藍は、ヨーロッパの毛織物産業において不可欠な染料であり、その需要は16世紀後半から急速に高まりました。ビハール地方やアグラ周辺で栽培された藍は、商人たちの手によって集められ、港町へと運ばれていきました。ケシの栽培も、特にマルワ地方やビハール地方で盛んに行われ、生産されたアヘンは国内で消費されるだけでなく、東南アジア向けの重要な輸出品となりました。
このような換金作物の生産拡大は、農業の専門化と地域分業を進展させました。特定の気候や土壌に適した作物が集中的に栽培されるようになり、各地域がそれぞれの特産品を持つようになりました。このことは、地域間の交易を活発化させ、インド亜大陸全体を覆う広範な市場ネットワークの形成を促しました。
この市場ネットワークの結節点となったのが、定期的に開かれる地方市（ハット）や、より規模の大きい町の市場（マンディー）でした。農民は、これらの市場に自らの生産物を持ち込み、穀物商人（バニヤ）や仲買人に販売しました。商人たちは、農村部で買い付けた農産物を都市部の消費地や港町の輸出拠点へと輸送し、利益を得ました。彼らは単なる商品の仲介者にとどまらず、農民に対して納税資金や生産資金を前貸しする金融業者の役割も果たしていました。この「前貸し制度」は、農民が換金作物の生産に着手する上で不可欠なものでしたが、同時に農民を商人への従属的な立場に置くことにもなりました。多くの場合、農民は借金の担保として収穫物を事前に安値で売却する契約を結ばざるを得ず、市場価格の上昇による利益を十分に享受することができませんでした。
都市部の発展も、農産物の商品化を後押ししました。デリー、アグラ、ラホールといった帝国の主要都市は、数十万の人口を抱える巨大な消費地であり、その食料や生活物資を周辺の農村地帯に依存していました。宮廷、官僚、軍隊、そして都市に集まる職人や商人たちの旺盛な需要が、農産物の安定した市場を提供し、農村における商品生産を刺激したのです。
このように、税の現金納付、換金作物の生産拡大、そして都市の発展という要因が相互に作用し合うことで、ムガル時代のインドでは農村経済の商業化が著しく進展しました。農村はもはや孤立した自給自足の単位ではなく、広域的な市場経済のダイナミズムの中に深く組み込まれていったのです。

ムガル時代の農村社会は、決して均質的なものではなく、複雑な階層構造を持っていました。その頂点に位置していたのは、前述のザミーンダールや、村落の共同体を代表する有力者たちでした。彼らは広大な土地を所有し、多くの小作人や農業労働者を支配下に置いていました。
その下には、自らの土地を所有し、主に家族労働によって耕作を行う独立自営農民の層が存在しました。彼らは「フッドカーシュタ」と呼ばれ、村落共同体の中核をなす存在でした。彼らは土地に対する世襲的な権利を持ち、比較的安定した生活を送ることができましたが、帝国の税負担は重く、不作や災害時には容易に困窮に陥る危険性を常に抱えていました。
独立自営農民の下には、自らの土地を持たず、ザミーンダールやフッドカーシュタから土地を借りて耕作する小作農の層が存在しました。彼らは「パーヒーカシュタ」と呼ばれ、多くの場合、収穫物の半分を地代として納めなければならず、その生活は極めて不安定でした。彼らの中には、より良い条件を求めて村から村へと移動する者もいました。
社会の最底辺に位置していたのは、土地を持たない農業労働者たちでした。彼らは日雇いで農作業に従事し、その日の糧を得ていました。彼らの多くは、特定のカーストに属しており、社会的な差別や経済的な搾取の対象となっていました。
農村経済の商業化は、この階層構造をさらに複雑化させ、流動的なものにしました。換金作物の栽培に成功し、富を蓄積する農民が現れる一方で、市場経済の変動や高利貸しへの負債によって土地を失い、小作農や農業労働者に転落する農民も少なくありませんでした。特に、裕福な農民や村の有力者たちは、商人や高利貸しと結びつき、資金力を背景に土地を集積し、その影響力を強めていきました。彼らは、他の農民に資金や種子を貸し付け、その見返りに労働力を提供させたり、収穫物を安価で手に入れたりすることで、村落内における支配を強化していったのです。
このように、ムガル時代の農村社会は、伝統的なカースト制度に基づく階層と、経済的な富の多寡に基づく新たな階層が複雑に絡み合った構造を持っていました。貨幣経済の浸透と商業化の進展は、一部の者に富をもたらす一方で、多くの農民を不安定な状況に追い込み、社会内の経済格差を拡大させる要因ともなったのです。

18世紀に入ると、アウラングゼーブ帝の死後、ムガル帝国は急速な衰退期を迎えます。帝位を巡る継承争いが頻発し、中央の権威は失墜しました。この政治的混乱は、帝国の屋台骨であった農村経済にも深刻な影響を及ぼしました。
中央政府の統制が弱まると、ジャギールダーリー制は崩壊し始めました。ジャギールダールたちは、割り当てられた土地からの徴税を確実に行うことが困難になり、自らの収入を確保するために、農民に対して過酷な取り立てを行うようになりました。頻繁な転勤という原則も崩れ、ジャギールを世襲的な領地と見なす者が現れ、地方で独立した勢力を築こうとする動きが活発化しました。
同様に、ザミーンダールたちも、帝国の衰退を好機と捉え、自らの権力を拡大しようとしました。彼らは帝国への納税を拒否し、徴収した税を自らの軍隊の維持や領地の拡大のために用いるようになりました。多くのザミーンダールが事実上の独立君主（ラージャ）として振る舞い始め、互いに抗争を繰り広げました。
このような政治的混乱と支配者層による搾取の強化は、農村社会に大きな打撃を与えました。度重なる戦争や略奪によって農地は荒廃し、農業生産は停滞しました。農民は、過酷な税負担と戦乱から逃れるために土地を放棄し、流民となるケースが増加しました。各地で農民反乱が頻発し、帝国の支配体制を内側から揺るがしました。特に、ジャート族、シク教徒、マラーター族などによる反乱は、大規模な武装蜂起へと発展し、ムガル帝国の解体を加速させる大きな要因となりました。
帝国の衰退は、広域的な商業ネットワークにも影響を及ぼしました。街道の治安が悪化し、商品の安全な輸送が困難になりました。また、各地に独立勢力が乱立したことで、関税が乱発され、交易コストが増大しました。これにより、かつてインド亜大陸を結びつけていた活発な商業活動は、次第にその勢いを失っていきました。
しかし、帝国の衰退が、インド経済全体の停滞を意味したわけではありません。中央の権力が後退する一方で、ベンガル、アワド、ハイダラーバードといった地域では、ムガル帝国の後継を自任する新たな地方政権が台頭しました。これらの地方政権は、それぞれの領内において安定を回復させ、独自の経済政策を推進しようと試みました。彼らは、地域の商人や金融業者と結びつき、農業生産や商業活動の振興を図りました。
また、この時期には、イギリスやフランスといったヨーロッパの東インド会社が、インドの政治・経済に対する影響力を急速に強めていきました。彼らは、インドの綿織物や香辛料などをヨーロッパ市場に輸出することで莫大な利益を上げ、その経済力を背景に、インドの地方政権間の争いに介入し、自らの勢力圏を拡大していきました。特にイギリス東インド会社は、プラッシーの戦い（1757年）とブクサールの戦い（1764年）を経て、豊かなベンガル地方の支配権を掌握し、インド植民地化への道を本格的に歩み始めます。
18世紀のインドは、ムガル帝国という統一的な政治権力が解体し、複数の地域国家とヨーロッパ勢力が競合する、流動的で複雑な時代でした。農村経済は、一方では戦乱と搾取によって深刻な打撃を受けましたが、他方では、新たな地方政権やヨーロッパとの交易という新しい枠組みの中で、そのあり方を再編成していくことになります。ムガル時代に培われた農業生産力、商品経済のネットワーク、そして商人階級の活動は、この転換期を乗り越え、その後のインド経済の礎となっていったのです。
ムガル帝国時代のインド農村経済は、中央集権的な統治システムと精緻な税制の下で、顕著な活発化を遂げました。アクバル帝によるザプト制の導入は、税負担の合理化と予測可能性をもたらし、農業生産へのインセンティブを高めました。同時に、税の現金納付の義務化は、農産物の商品化と貨幣経済の浸透を決定的に促しました。
耕作地の拡大、灌漑施設の整備、そして新大陸からもたらされた作物の導入により、農業生産は量的に拡大し、多様化しました。綿花、藍、ケシといった換金作物の栽培が盛んになり、農村は自給自足の世界から、広域的な市場経済のダイナミズムの中に組み込まれていきました。この過程で、農村と都市、そしてインドと世界を結ぶ商業ネットワークが発展し、商人や金融業者が経済活動において重要な役割を担うようになりました。
しかし、この経済の活発化は、農村社会に新たな階層分化と格差をもたらしました。一部の裕福な農民や有力者が富を蓄積する一方で、多くの農民は重税、市場価格の変動、高利貸しへの負債といった圧力の下で不安定な生活を強いられました。18世紀に入り帝国が衰退すると、政治的混乱と支配者による搾取の強化が農村を疲弊させ、多くの農民反乱を引き起こしました。
ムガル帝国が築き上げた農村経済のシステムは、帝国の衰退とともに崩壊しましたが、その時代に達成された生産力の向上、商業ネットワークの拡大、そして貨幣経済の浸透は、インド社会に不可逆的な変化をもたらしました。それは、その後の地域国家の興隆やヨーロッパ勢力の進出といった新たな歴史の展開を迎える上での経済的基盤となったのです。