ヒンドゥー教は、インド亜大陸に起源を持つ世界最古の宗教の一つであり、その歴史は非常に複雑で多様です。


ヒンドゥー教の起源は、紀元前に存在したインダス文明に遡るとされています。この文明は、現在のパキスタンと北西インドに位置し、高度な都市文化を持っていました。紀元前13世紀頃に前身となるバラモン教が発展し、インダス文明の宗教的慣習や信仰が、後のヒンドゥー教の基盤となったと考えられています。

紀元前1500年頃、インド・アーリア人がインド亜大陸に移住し、ヴェーダと呼ばれる聖典をもたらしました。ヴェーダは、ヒンドゥー教の最古の聖典であり、リグ・ヴェーダ、サーマ・ヴェーダ、ヤジュル・ヴェーダ、アタルヴァ・ヴェーダの四つの主要なヴェーダから成り立っています。この時期の宗教は「ヴェーダ宗教」と呼ばれ、後のヒンドゥー教の基盤を形成しました。




紀元前6世紀から紀元前4世紀にかけて、ヒンドゥー教は大きな変革を迎えました。この時期には、ウパニシャッドと呼ばれる哲学的な文献が登場し、カルマ（行為）やサムサーラ（輪廻）といった概念が発展しました。また、仏教やジャイナ教といった他の宗教もこの時期に誕生し、ヒンドゥー教の発展に影響を与えました。

このヒンドゥー教の「古典期」では、マハーバーラタやラーマーヤナといった叙事詩が編纂されました。これらの叙事詩は、ヒンドゥー教の神話や倫理観を伝える重要な文献です。

中世期には、グプタ朝の支配下でヒンドゥー教が大いに栄えました。この時期には、シヴァ神やヴィシュヌ神を中心とした信仰が広まり、寺院建築や彫刻が発展しました。また、バクティ運動と呼ばれる宗教改革運動が起こり、個人の神への献身が強調されるようになりました。


12世紀から18世紀にかけて、インドはイスラム教徒の支配を受けました。この時期には、ヒンドゥー教とイスラム教の間で文化的な交流が行われ、シク教などの新しい宗教も誕生しました。また、バクティ運動はこの時期にも続き、多くの詩人や聖者が登場しました。

19世紀には、イギリスの植民地支配が始まり、ヒンドゥー教は大きな変革を迎えました。西洋の思想や科学技術の影響を受け、ヒンドゥー教の改革運動が起こりました。ラーム・モーハン・ローイやスワーミー・ヴィヴェーカーナンダといった改革者たちは、ヒンドゥー教の教義を再解釈し、現代社会に適応させる努力をしました。

ヒンドゥー教の歴史は、インダス文明から現代に至るまでの長い期間にわたり、多様な文化的、宗教的影響を受けながら発展してきました。その豊かな歴史と文化的背景は、インドのみならず世界中で重要視されています。