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百人一首71『夕されば門田の稲葉おとづれてあしのまろ屋に秋風ぞ吹く』現代語訳と解説(掛詞など)
著作名: 走るメロス
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百人一首(71)大納言経信/歌の意味と読み、現代語訳、単語、品詞分解、覚え方

夕されば 門田の稲葉 おとづれて あしのまろ屋に 秋風ぞ吹く


このテキストでは、百人一首に収録されている歌「夕されば門田の稲葉おとづれてあしのまろ屋に秋風ぞ吹く」のわかりやすい現代語訳・口語訳と解説(掛詞、係結び、句切れの有無など)、歌が詠まれた背景や意味、そして品詞分解を記しています。この歌は、百人一首の他に金葉和歌集にも収録されています。



百人一首とは

百人一首は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけて活動した公家・藤原定家が選んだ和歌集です。100人の歌人の和歌を、1人につき1首ずつ選んで作られています。百人一首と言われれば一般的にこの和歌集のことを指し、小倉百人一首(おぐらひゃくにんいっしゅ)とも呼ばれます。


暗記に役立つ百人一首一覧

以下のテキストでは、暗記に役立つよう、それぞれの歌に番号、詠み手、ひらがなでの読み方、そして現代語訳・口語訳を記載し、歌番号順に一覧にしています。

暗記に役立つ百人一首一覧


原文

夕されば (※1)門田の稲葉 (※2)おとづれて (※3)あしの(※4)まろ屋に 秋風ぞ吹く


ひらがなでの読み方

ゆふされば かどたのいなば おとづれて あしのまろやに あきかぜぞふく



現代語訳

夕方になると、(家の門の前にある)田んぼの稲の葉に(そよそよと)音を立てて、葦ふきの粗末な家に秋風が吹くことです。


解説・鑑賞のしかた

この歌の詠み手は、平安時代後期の貴族源経信(みなもと の つねのぶ)です。百人一首では大納言経信(だいなごんつねのぶ)として収録されています。源経信は和歌はもちろんのこと、管弦や漢詩にも優れ、また有職故実にも通じており、その多芸ぶりは藤原公任と比べられたほどでした。

この歌は貴族の集まりの際に、「田家の秋風」という題で詠まれたものです。当時の貴族の間では、田舎に別荘をもち田園の風景を楽しむことが流行していました。百人一首の中では珍しい叙景歌です。

主な技法・単語・文法解説

単語・文法解説

(※1)門田家の門の前にある田んぼ
(※3)あし植物の葦。ここでは「葦ふき」と訳している
(※4)まろ屋粗末な家。貴族が集まる家なので本来は粗末なはずはないが、あえて「まろ屋」と言うことで、田舎らしさをうまく表現している



(※2)掛詞

「掛詞」とは、ひとつの言葉に2つ以上の意味を重ねて表現内容を豊かにする技法のこと。この歌では「おとづれ」が、「音を立てる」と「訪問する」という2つの意味を掛けている。


句切れ

句切れなし。


品詞分解

※名詞は省略しています。



夕されラ行四段活用「ゆふさる」の已然形
接続助詞
門田
格助詞
稲葉
おとづれラ行下二段活用「おとづる」の連用形
接続助詞
あし
格助詞
まろ屋
格助詞
秋風
係助詞・係り結び
吹くカ行四段活用「ふく」の連体形



著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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