メンフィスとは、古代エジプトの最初の首都であり、エジプト史の多くの時代にわたって重要な中心地であった都市です。メンフィスは、ナイル川デルタの南、現在のカイロの南約24キロメートルに位置していました。メンフィスは、上エジプトと下エジプトの二つの王国を統一したとされるメネス王によって紀元前2925年頃に建設されたという伝説があります。メンフィスの最初の名前は「白い壁」と呼ばれ、これは白く塗られたレンガで作られた王宮を指していた可能性があります。メンフィスの現代の名前は、ギリシャ語でエジプトの第6王朝（紀元前2325年から紀元前2150年）の王ペピ1世の近くにあるピラミッドの名前であるメンネフェルから来ています。メンフィスのもう一つの地理的な呼び名は、プタハのカ（魂）の館という意味のハト・カ・プタハでした。この名前は、マネトという神官で歴史家によってギリシャ語でアイギュプトスとして書かれ、これが現代の英語名であるエジプトの語源と考えられています。



プタハとは、メンフィスの守護神であり、職人や芸術家の守護神であるとともに、創造神としても崇拝されていました。プタハの大神殿は、メンフィスの最も目立つ建造物の一つでした。メンフィス神話と呼ばれるエジプトの文書によると、プタハは自分の心と言葉の力によって人間を創造したとされています。創造者の心の中で形作られた概念は、神聖な言葉そのものによって存在になったのです。この文書は、創造行為の従来の物理的な類似からの自由さと、抽象度の高さにおいて、エジプトではほとんど唯一のものであり、メンフィスの神官たちの哲学的な洗練さを証明しています。メンフィスの最初の時代の重要性は、西の砂漠の崖に沿って集まる初期王朝時代（紀元前2925年から紀元前2575年）と古王国時代（紀元前2575年から紀元前2130年）の広大な墓地に示されています。ここには、有名なギザのピラミッドを含む、30キロメートル以上にわたって広がるピラミッド群があります。メンフィスとそのネクロポリスは、1979年にユネスコの世界遺産に登録されました。

メンフィスは、初期王朝時代と古王国時代のほとんどの期間にわたってエジプトの首都であり続けました。メンフィスは、ナイル川デルタの入り口に位置しており、戦略的に重要な場所でした。メンフィスの主要な港であるペル・ネフェル（アヴァリスのペル・ネフェルとは別物）は、エジプト全土に食料や商品を配給する工房、工場、倉庫が密集していました。メンフィスは、商業、貿易、宗教の地域的な中心地として栄えました。メンフィスは、ヘラクレオポリスやテーベとのライバル関係にもかかわらず、重要性を保ちました。特に、プタハの崇拝はメンフィスの特徴でした。メンフィスは、中王国時代（紀元前1938年から紀元前1630年）や新王国時代（紀元前1539年から紀元前1075年）にも、エジプトの政治的な中心地として機能しました。しかし、その後の時代には、テーベやアレクサンドリアなどの都市にその地位を奪われました。メンフィスは、紀元7世紀に放棄されるまで、エジプトの文化的な中心地として残りました。現在、メンフィスの遺跡は、ミト・ラヒナという村の近くにあり、野外博物館として一般に公開されています。