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楔形文字とは 世界史用語120
著作名: ピアソラ
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楔形文字とは

楔形文字とは、紀元前3500年頃にメソポタミアで発明された、世界最古の文字体系です。楔形文字は、湿った粘土板に葦の筆でくさび状の跡をつけることで書かれました。そのため、楔形文字という名前は、ラテン語で「くさび」を意味するcuneusに由来します。楔形文字は、文字としてではなく、音節や単語を表す記号として機能しました。例えば、「猫」は「ca-at」という二つの音節で書かれ、「博物館」は「mu-zi-um」という三つの音節で書かれました。また、一部の記号は、英語の「£」がポンドを表すように、単語全体を表しました。

楔形文字は、最初はシュメール語というメソポタミア南部の言語を書くために使われました。シュメール語は、古代の都市国家の管理や取引に関する記録を残すために必要でした。やがて、楔形文字は他の言語にも適用されるようになり、中東の広い地域で使われるようになりました。楔形文字で書かれた言語には、アッカド語、エブラ語、エラム語、ヒッタイト語、フルリ語、ルウィ語、ウラルトゥ語などがあります。アッカド語は、紀元前24世紀から紀元後2世紀まで、楔形文字の最も一般的な言語でした。ヒッタイト語は、紀元前2千年紀初頭に、楔形文字を自分たちの言語に合わせて改良した最初の言語でした。また、古代ペルシア語やウガリット語という言語は、楔形文字に似た文字を使いましたが、楔形文字とは関係ありませんでした。



楔形文字は、古代の文化や歴史に関する貴重な情報源となっています。楔形文字で書かれた粘土板は、火災や戦争によって焼かれることで、より耐久性が高くなりました。そのため、数千年の間、保存されてきました。楔形文字で書かれた文書には、法律、契約、手紙、神話、詩、占い、医学、数学、天文学など、さまざまな分野のものがあります。楔形文字で書かれた最も有名な文書の一つは、ギルガメシュ叙事詩と呼ばれる古代の物語です。この物語は、洪水伝説を含んでおり、聖書のノアの箱舟の物語との類似点が指摘されています。

楔形文字は、紀元後2世紀頃に使われなくなりました。その後、楔形文字の読み方は忘れられてしまいました。楔形文字の解読は、17世紀にペルセポリスで発見された古代ペルシア語の碑文から始まりました。この碑文は、三つの言語で書かれており、そのうちの一つが楔形文字でした。19世紀に入ると、シュメール語やアッカド語などの他の楔形文字の言語も解読されるようになりました。楔形文字の研究は、アッシリア学と呼ばれる学問分野に属しています。現在、世界中の博物館には、約50万枚の楔形文字の粘土板が収蔵されていますが、そのうちのほんの一部しか出版されていません。楔形文字の解読には、ベヒストゥン碑文という三つの言語で書かれた同じ内容の碑文が重要な役割を果たしました。この碑文は、古代ペルシア語、アッカド語、エラム語で書かれており、それぞれ楔形文字で表記されていました。最初に古代ペルシア語の部分がドイツの言語学者グローテフェントによって解読されました。その後、イギリスの軍人ローリンソンとアイルランド人のアッシリア学者ヒンクスがアッカド語の部分を解読しました。エラム語の部分は、20世紀に入ってから解読されました。楔形文字の解読には、他にも多くの研究者や発見者が貢献しましたが、ベヒストゥン碑文は楔形文字のロゼッタ・ストーンと呼ばれるほど、解読の鍵となりました。

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