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高校古文『手をひてて寒さも知らぬ泉にぞくむとはなしに日ごろ経にける』わかりやすい現代語訳と品詞分解
著作名: 走るメロス
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はじめに

このテキストでは、土佐日記に収録されている歌「手をひてて寒さも知らぬ泉にぞくむとはなしに日ごろ経にける」の原文、現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。



収録されている箇所は、土佐日記の「四日。楫取り、『今日、風雲のけしきはなはだ悪し』と言ひて〜」から始まる一節(二月四日/忘れ貝)です。

※土佐日記は平安時代に成立した日記文学です。日本の歴史上おそらく最初の日記文学とされています。作者である紀貫之が、赴任先の土佐から京へと戻る最中の出来事をつづった作品です。
原文

手をひてて寒さも知らぬ泉にぞくむとはなしに日ごろにける

ひらがなでの読み方

てをひててさむさもしらぬいずみにぞくもとはなしにひごろへにける



現代語訳

手を水にぬらしても冷たさを感じるわけではない泉、その和泉という場所で、水をくむわけでもなく数日を過ごしてしまったことよ。

解説

紀貫之が著した土佐日記には、この歌が詠まれた場面が次のように記されています。

土佐から京へと戻る船旅の途中、和泉という場所で天候不良のために足止めをされます。船頭が「今日は、風や雲の様子がとてもよくない。」というので船を出さずにいたのですが、実際は一日中波風は立たず、手持ち無沙汰な時間が流れていきました。同じ場所でひたすらに時間が過ぎていくことを嘆いて一行の中のとある女性が詠んだ歌がこの歌です。



技法

縁語

「ひて」、「くむ」は、「和泉」の縁語。

掛詞

「泉」は、地名の「和泉」と水が湧く「泉」とを掛けた掛詞。

品詞分解

※名詞は省略しています。



格助詞
ひてタ行下二段活用「ひつ」の連用形
接続助詞
寒さ
係助詞
知らラ行四段活用「しる」の未然形
打消の助動詞「ず」の連体形
格助詞
係助詞
くむマ行四段活用「くむ」の終止形
格助詞
係助詞
なしク活用の形容詞「なし」の終止形
格助詞
日ごろ
ハ行下二段活用「ふ」の連用形
完了の助動詞「ぬ」の連用形
ける。詠嘆の助動詞「けり」の連体形


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