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9_80 文章の読み解き / 文章の読み解き

土佐日記『忘れ貝』(四日。楫取り、『今日、風雲のけしきはなはだ悪し〜) わかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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土佐日記「二月四日/忘れ貝」

このテキストでは、土佐日記の「四日。楫取り、『今日、風雲のけしきはなはだ悪し』と言ひて〜」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説を行っています。書籍によっては「二月四日」や「忘れ貝」と題するものもあるようです。

土佐日記の作者は紀貫之です。

原文

四日。楫取り、

「今日、風雲のけしきはなはだ悪し。」


と言ひて、船いださずなり(※1)ぬしかれどもひねもすに波風立たず。この楫取りは、日も(※2)え測らぬ かたゐなりけり。この泊の浜には、くさぐさうるはしき貝・石など多かりかかれば、ただ(※3)昔の人をのみ恋ひつつ、船なる人の詠める、
 
寄する波うちも寄せ(※4)なむわが恋ふる人忘れ貝降りて拾はむ

歌の解説

 
と言へれば、ある人のたへずして、船の心やりに詠める、
 
忘れ貝拾ひしもせじ(※5)白玉を恋ふるをだにも形見と思はむ

歌の解説

 
となむ言へる。女児のためには、親幼くなり(※6)ぬべし

「玉ならずもあり(※7)けむを。」


と人言はむ(※8)や。されども、

し子、顔よかりき。」


と言ふやうもあり。なほ同じ所に日を経ることを嘆きて、ある女の詠める歌、
 
手をひてて寒さも知らぬ泉にぞくむとはなしに日ごろ経にける

歌の解説


現代語訳

四日。船頭が、

「今日は、風や雲の様子がとてもよくない。」


と言って、船を出さないままになった。しかしながら、一日中波風は立たない。この船頭は、天候も予測できない愚か者であった。この港の浜辺には、(子どもの喜びそうな)様々な種類の美しい貝や石などがたくさんある。このようなわけで、ただ亡くなった人(自分の娘)のことばかりを恋しく思い、船にいる人(紀貫之の妻)が詠んだ(歌)。

(浜辺に)打ち寄せる波よ、どうか(恋しい人を忘れさせるという)忘れ貝を打ち寄せてほしい。そしたら(船から)降りて拾うから。


と詠んだので、居合わせる人がこらえることができずに、船旅の気晴らし(のため)に詠んだ(歌)。

忘れ貝は決して拾うまい。白玉(のようにかわいいあの子)を恋しく思うだけでも、(あの子の)形見と思いましょう。


と詠んだ。娘のためには、親は子どものようになってしまうのであろう。

「白玉と言うほどではなかっただろう。」


と人は言うだろうか。しかし、

「亡くなった子は、顔が美しかった。」


と言うようなこともある。依然として、同じ場所で時間が経つことを嘆いて、とある女性が詠んだ歌。

手を水にぬらしても冷たさを感じるわけではない泉、その和泉という場所で、水をくむわけでもなく数日を過ごしてしまったことよ。


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『教科書 精選国語総合』 三省堂
『教科書 高等学校 国語総合 古典編』 三省堂
佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店

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