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十八史略 鶏口牛後 書き下し文
著作名: mory
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白文と書き下し文のみを掲載した。

白文

※句点、読点、鍵括弧などを施してある。

 秦人恐喝諸侯、求割地。有洛陽人蘇秦。游説秦恵王不用。乃往説燕文侯、与趙従親。燕資之以至趙。説粛侯曰、「諸侯之卒、十倍於秦。并力西向、秦必破矣。為大王計、莫若六国 従親以擯秦。」粛侯乃資之以約諸侯。蘇秦以鄙諺説諸侯曰、「寧為鶏口、無為牛後。」於是六国従合。
 蘇秦者、師鬼谷先生。初出游、困而帰。妻不下機、嫂不為炊。至是為従約長、并相六国。行過洛陽。車騎輜重、擬於王者。昆弟妻嫂、側目、不敢視。俯伏侍取食。蘇秦笑曰、「何前倨而後恭也」。嫂曰「見季子位高金多也。」秦喟然歎曰、「此一人之身。富貴則親戚畏懼之、貧賎則軽易之。況衆人乎使我有洛陽負郭田二頃、豈能佩六国相印乎。」於是散千金、以賜宗族・朋友。

書き下し文

※書き下しには諸説あり。

 秦人諸侯を恐喝して、地を割かんことを求む。洛陽の人蘇秦なるもの有り。秦の恵王に游説して用ゐられず。乃ち往きて燕の文侯に説き、趙と従親せしめんとす。燕之に資し、以て趙に至らしむ。粛侯に説きて曰はく、「諸侯の卒、秦に十倍す。力を并せて西に向かはば、秦必ず破れん。大王の為に計るに、六国従親して以て秦を擯くるに若くは莫し」と。粛侯乃ち之に資し、以て諸侯を約せしむ。蘇秦鄙諺を以て諸侯に説きて曰はく、「寧ろ鶏口と為るとも、牛後と為ること無かれ」と。是に於いて六国従合す。
 蘇秦は、鬼谷先生を師とす。初め出游し、困しみて帰る。妻は機を下らず、嫂は為に炊がず。是に至りて従約の長と為り、六国に并せ相たり。行きて洛陽に過ぎる。車騎輜重、王者に疑す。昆弟妻嫂、目を側めて、敢へて視ず。俯伏し侍して食を取る。
蘇秦笑ひて曰はく「何ぞ前には倨りて後には恭しきや」と。嫂曰はく「季子の位高く金多きを見ればなり」と。秦喟然として歎じて曰はく、「此れ一人の身なるに、富貴なれば則ち親戚すら之を畏懼し、貧賎なれば則ち之を軽易す。況んや衆人をや。我をして洛陽負郭の田二頃有らしめば、豈に能く六国の相印を佩びんや。」是に於いて千金を散じ、以って宗族・朋友に賜ふ。

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