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源氏物語『澪標・住吉参詣』(その秋、住吉に詣で給ふ〜)の現代語訳・口語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
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源氏物語『住吉参詣』
このテキストでは、源氏物語の中の『住吉参詣』の「その秋、住吉に詣で給ふ」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説を行っています。このお話は「澪標(みおつくし)」の巻に記されてされています。
原文
その秋、住吉に詣で給ふ。願ども果たし給ふべければ、いかめしき御歩きにて、世の中ゆすりて、上達部、殿上人、我も我もと仕うまつり給ふ。
折しも、かの明石の人、年ごとの例のことにて詣づるを、去年今年は障ることありて、おこたりける、かしこまり取り重ねて、思ひ立ちけり。舟にて詣でたり。岸にさし着くるほど、見れば、ののしりて詣で給ふ人のけはひ、渚に満ちて、いつくしき神宝を持て続けたり。楽人、十列など、装束を整へ、容貌を選びたり。
「誰が詣で給へるぞ。」
と問ふめれば、
「内大臣殿の御願果たしに詣で給ふを、知らぬ人もありけり。」
とて、はかなきほどの下衆だに、心地よげにうち笑ふ。
「げに、あさましう、月日もこそあれ、なかなか、この御ありさまをはるかに見るも、身のほど口惜しうおぼゆ。さすがに、かけ離れたてまつらぬ宿世ながら、かく口惜しき際の者だに、もの思ひなげにて、仕うまつるを色ふしに思ひたるに、何の罪深き身にて、心にかけておぼつかなう思ひ聞こえつつ、かかりける御響きをも知らで、立ち出でつらむ。」
など思ひ続くるに、いと悲しうて、人知れずしほたれけり。
現代語訳(口語訳)
その秋に、(光源氏は)住吉大社にご参詣になります。以前に祈願したことがかなったお礼をなさる予定で、盛大なご行列で、世間は大騒ぎをして、上達部や天上人が、我も我もとお供を申し上げなさいます。
ちょうどそのとき、あの明石の君が、毎年恒例の行事として(住吉大社に)参詣するのですが、去年今年は差し障りがあって、(参詣を)怠っていたのですが、そのお詫びも兼ねて、思い立っ(てやってき)たのです。舟で参詣しました。岸に着けるときに、見ると、大騒ぎして参詣なさる人の様子が、渚いっぱいに満ちており、おごそかな奉納の品を持った列が続いています。音楽を奏でる人は十人ほど、装束を整えて、顔のよい人を選んでいます。
「誰が参詣なさっているのですか。」
と(明石の君が通行人に)尋ねてみたところ、
「内大臣殿が願ほどきに参詣なさるのを、知らない人もいるものだなあ。」
といって、取るに足らない身分の低い者までもが、(明石の君のことを)得意気に笑います。
「本当に、あきれるほどひどいものです、月日は他にもあるでしょうに、なまじっか、この(光源氏の)ご威勢を遠くから見るにつけても、自分の身が情けなく思われます。そうはいっても、お離れ申し上げることのない縁である(と知ってはいる)のですが、このようにつまらない身分の者であっても、何の心配もなく、お供をすることを名誉なことと思っているのに、(私は)罪深い身だからといって、(帰京された光源氏のことをいつも)心にかけてご案じ申し上げているにもかかわらず、このような評判も知らないで、どうして出かけてきてしまったのでしょうか。」
などと思い続けると、(明石の君は)とても悲しくて、人知れず涙で袖を濡らしたのでした。
品詞分解
品詞分解はこちら
「その秋、住吉に詣で給ふ〜」の品詞分解
単語・文法解説
いかめしき | 形容詞「いかめし」の連体形。盛大な |
ゆすり | ラ行四段活用「ゆする」の連用形。大騒ぎをする |
いつくしき | 形容詞「いつくし」の連体形。おごそかな |
はかなき | 形容詞「はかなし」の連体形。取るに足らない |
あさましう | 形容詞「あさまし」の連用形のウ音便。あきれるほどひどい |
口惜しう | 形容詞「口惜し」の連用形のウ音便。情けない、残念だ |
色ふし | 名誉なこと |
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