|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
徒然草『いでや、この世に生まれては』の現代語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
93,608 views |
徒然草『いでや、この世に生まれては』
このテキストでは、徒然草の『いでや、この世に生まれては』の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。
※徒然草は兼好法師によって書かれたとされる随筆です。清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』と並んで「古典日本三大随筆」と言われています。
原文(本文)
いでや、この世に生まれては、願はしかるべきことこそ多かめれ。
帝の御位はいともかしこし。竹の園生の末葉まで、人間の種ならぬぞやむごとなき。一の人の御ありさまはさらなり、ただ人も、舎人など賜はる際はゆゆしと見ゆ。その子・孫までは、はふれにたれど、なほなまめかし。それより下つ方は、ほどにつけつつ、時にあひ、したり顔なるも、みづからはいみじと思ふらめど、いと口惜し。
法師ばかりうらやましからぬものはあらじ。
「人には木の端のやうに思はるるよ。」
と、清少納言が書けるも、げにさることぞかし。勢ひ猛に、ののしりたるにつけて、いみじとは見えず。増賀聖の言ひけむやうに、名聞苦るしく、仏の御教へに違ふらむとぞおぼゆる。ひたふるの世捨て人は、なかなかあらまほしき方もありなむ。
人は、かたちありさまのすぐれたらむこそ、あらまほしかるべけれ。ものうち言ひたる、聞きにくからず、愛敬ありて、言葉多からぬこそ、飽かずむかはまほしけれ。めでたしと見る人の、心劣りせらるる本性見えむこそ、口惜しかるべけれ。品・かたちこそ生れつきたらめ、心はなどか、賢きより賢きにも移さば移らざらむ。かたち・心ざまよき人も、才なくなりぬれば、品くだり、顔憎さげなる人にも立ちまじりて、かけず、けおさるるこそ、本意なきわざなれ。
ありたきことは、まことしき文の道、作文、和歌、管絃の道、また有職に公事の方、人の鏡ならむこそいみじかるべけれ。手など拙からず走り書き、声をかしくて拍子とり、いたましうするものから、下戸ならぬこそ、男はよけれ。
現代語訳(口語訳)
さてさて、この世に生まれたからには、こうありたいと思うはずのことが多いようです。
帝のお位(をその願いの中に入れること)はたいそう恐れ多いものです。皇族の末裔にいたるまで、人間の血筋でないことは尊ぶべきことです。摂政や関白のご様子は言うまでもなく、普通の貴族でも、舎人など(の役職)をうけたまわっている身分の人は立派に見えます。その子や孫までは、落ちぶれていたとしても、依然として優雅です。それよりも(身分が)下の人は、身分に応じて、時代にあわせて栄え、得意顔をするのも、自分ではすばらしいことだと思うようですが、それはとても残念なことです。
法師ほどうらやましくないものはないでしょう。
「(法師というものは)人には木の端のように(たいしたことがないものと)思われているよ。」
と清少納言が書いていることも、本当にもっともなことです。(位が高く)勢いがあり、評判になるにつけても、素晴らしいとは思えません。増賀聖が言ったということですが、世間的な名声(に執着すること)はつらく、仏の教えに背いていると思えます。一途な世捨て人は、かえって望ましい(生活をする)人もいるでしょう。
人は容姿が優れていることが、望ましいことでしょう。ものを言うのにつけても、聞きにくいこともなく、人情味があって、口数が多くない人とは、飽きずに対座していたいものです。すばらしいと見える人の、幻滅させるような本性が見えることこそ、残念なことです。身分や容姿こそ生まれつきのものですが、心などは、優れているものからさらに優れているものに移そうとして移せないことがありましょうか、いや写せます。容姿や心構えが良い人も、教養がなくなってしまえば、身分が低く、顔つきがいかにも醜い人にも入り交じって、簡単に圧倒されるのは、不本意なことです。
身につけておきたいことは、正式な学問の道、漢詩を作ること、和歌を詠むこと、管弦楽の道、また有職や公事の方面で、人の手本であるようなのがすばらしいことです。文字などは下手ではなくすらすらと書き、(酒宴の座では)声がよくて(楽器の)調子をあわせ、(酒をすすめられて)困った様子はみせるものの、下戸ではない人こそ、男としてはよいものです。
■次ページ:品詞分解と単語・文法解説
【なぜ少子高齢化は問題なのか?】
1ページ
|
前ページ
|
1/2 |
次ページ |
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
十訓抄『大江山・小式部内侍が大江山の歌の事』テストで出題されそうな問題
>
古今和歌集『つひに行く道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを』現代語訳と解説・品詞分解
>
宇治拾遺物語『児のそら寝』わかりやすい現代語訳と解説
>
源氏物語「若紫・北山の垣間見・若紫との出会い(尼君、「いで、あな幼や〜)」の現代語訳と解説
>
『世の中を憂しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば』現代語訳と品詞分解
>
最近見たテキスト
徒然草『いでや、この世に生まれては』の現代語訳と解説
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング