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平家物語原文全集「座主流 5」 |
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著作名:
古典愛好家
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山門には、大衆おこって僉議す。
「そもそも義真和尚よりこのかた、天台座主始まって五十五代に至るまで、いまだ流罪の例を聞かず。つらつら事の心を案ずるに、延暦の比ほひ、皇帝は帝都を建て、大師は当山によぢのぼって、四明の教法をこの所に広め給ひしよりこのかた、五障の女人跡たえて、三千の浄侶居しめたり。峰には、一乗読誦年ふりて、麓には、七社の霊験日新(あらた)なり。かの月氏の霊山は、王城の東北、大聖の幽窟なり。この日域の叡岳も、帝都の鬼門にそばだって、護国の霊地なり。代々の賢王智臣、この所に壇場をしむ。末代ならんがらに、いかんが当山にきずをばつくべき。心憂し」
とて、おき叫ぶといふほどこそありけれ、満山の大衆、皆東坂本へおりくだる。
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