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『憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ』わかりやすい現代語訳と品詞分解 
著作名: 走るメロス
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『憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ』現代語訳と解説


憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ


このテキストでは、万葉集に収録されている和歌「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ」の現代語訳・口語訳と解説(句切れなど)、そしてその品詞分解を記しています。



万葉集とは

万葉集は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集です。平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった『梅花の歌三十二首并せて序』をはじめ、天皇や貴族、役人や農民など様々な身分の人々が詠んだ4500以上の歌が収録されています。


原文

憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ それその母も 我を待つらむそ

ひらがなでの読み方

おくららは いまはまからむ こなくらむ それそのははも われをまつらむそ

現代語訳

憶良めはもうおいとまいたしましょう。(家で)子が泣いているでしょうし、それにほら、その母(私の妻)も私を待っているでしょうよ。



解説・鑑賞のしかた

この歌の前書きには、「山上憶良が宴を退出する(ときに詠んだ)歌」と記されてます。

山上憶良(やまのうえ の おくら)は、遣唐使として唐に渡った経験をもつ飛鳥時代〜奈良時代の歌人ですが、この歌を詠んだとき、山上憶良は60~70歳でした。60~70歳の老人が、「家で子が泣いている」、「その子の母親が私の帰りを待っている」というのは非現実的であり、この歌は、宴会から先に帰ってしまうとみんな気を悪くしてしまうだろうからということで、とっさに思い浮かんだジョークなんですね。そこにこの歌のおもしろさがあります。


主な技法・単語・文法解説

「罷らむ/子泣くらむ/待つらむ」の「らむ」の違い

罷らむ「おいとまする」を意味するラ行四段活用「罷る」の未然形「罷ら」+意志の助動詞「む」の終止形
子泣くらむ「らむ」は、現在推量の助動詞「らむ」の終止形
待つらむ現在推量の助動詞「らむ」の連体形



句切れ

二句切れ・三句切れ

「罷ら」が終止形で句切れ、「子泣くらむ」が終止形で句切れている。




品詞分解

※名詞は省略しています。

憶良らー。「ら」は謙譲を表す接尾語
係助詞
係助詞
罷らラ行四段活用「まかる」の未然形
意志の助動詞「む」の終止形
泣くカ行四段活用「なく」の終止形
らむ現在推量の助動詞「らむ」の終止形
それ感動詞または代名詞
代名詞
格助詞
係助詞
代名詞
格助詞
待つタ行四段活用「まつ」の終止形
らむ現在推量の助動詞「らむ」の連体形
終助詞または係助詞



著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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