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『矛盾』の由来-わかりやすい解説と現代語訳(口語訳)- |
著作名:
春樹
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『矛盾』の由来-わかりやすい解説と現代語訳(口語訳)-
みなさんは矛盾という言葉をご存じですか?「つじつまがあわない」という意味で使われる言葉ですが、「矛盾=つじつまがあわない」となったお話をご紹介しましょう。
昔あるところに、矛(ほこ)と盾(たて)を売る商人がいました。商人が言うには
商人:「こちらにある矛。これはすぐれものだよ!なんてったってどんな堅い盾をも貫いてしまうんだから。この矛をもってさえいれば、どんな盾でも突き破ることができる。さー、買った買った!」
商人は続けます。
商人:「こちらにある盾もすぐれものだよ。どんな矛で突かれても、絶対に破られることはないんだから。さっきの矛と一緒に持っていたらもう怖いものなし!」
その商人の説明を聞いていた一人のお客が、何かおかしいと感じて質問をしました。
お客:「じゃあその矛でその盾を突いたら、いったいどっちが勝つんだ?なんでも貫き通せる矛と、なんでもガードができる盾なんだよね?どうなの?」
こう聞かれた商人は困ってしまって何も言うことができなくなってしまいました。
この話は、中国の「韓非子」(かんびし)という本の中にあるお話で、このことから、矛と盾をたして「矛盾」という言葉が誕生し、「つじつまがあわない」という意味をもつようになったと言われています。
矛盾の概念と儒の思想への批判
矛と盾という物語は、上記の通り中国の古典『韓非子』に登場するエピソードです。この話では、楚の商人が「どんな盾でも突き通す矛」と「どんな矛も防ぐ盾」を販売していました。ところが、ある客が「その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と尋ねると、商人は返答に窮してしまいました。この逸話が「矛盾」という言葉の起源となり、同時に成り立たないことやつじつまの合わないことを表す言葉として用いられるようになりました。
この話からわかるように、「矛盾」とは、ある事柄に関して二つの主張が同時に成り立たず、相容れない状態を指します。たとえば、「私は嘘つきだ」という発言は自己矛盾です。もし本当に嘘つきならば、その発言も嘘であるべきですが、その場合は真実を述べていることになります。逆に、もし真実を述べているならば、嘘つきではないはずですが、その場合は自分の発言を否定してしまいます。どちらにしても、一貫性がありません。
「矛盾」には、他にも「撞着」「非両立関係」「不合理」「不整合」「抵触」「背反」「逆説」「パラドックス」といった類似の言葉や表現があります。
また、この話は『韓非子』において、儒家思想(孔子や孟子の考え方を含む)を批判するたとえとして使用されています。儒家は伝説的な時代の聖王である「堯」と「舜」の政治を最高のものとしましたが、韓非子によれば、もし堯が優れた君主で民を善く統治していたならば、舜は改心し立派な行いをし、人々を助けることは起こり得ないと主張しました。一方が優れた人物であるならば、他方はそうではなくなってしまい、両者が同じく最高の人物で理想的な政治を行ったというのは矛盾しており、現実的ではないという意味を込めて、この喩え話で批判を行ったのです。
哲学分野での矛盾の思想の重要性
哲学の分野では、「矛盾」を利用した推論法や論理体系も存在します。背理法や矛盾許容論理などがその例です。
哲学においては、矛盾は物事の進展における原動力として重要視されることもあります。例えば、ドイツの哲学者ヘーゲルは自身の「弁証法」理論で、対立する二つの要素(テーゼとアンチテーゼ)から新たな要素(ジンテーゼ)が生まれる過程を説明しました。また、日本の哲学者西田幾多郎は「絶対矛盾的自己同一」という概念を提唱しました。これは、自己と他者、主観と客観、個と全など、相反するものが根源的な一体性を持っているという考え方です。
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