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サヘラントロプスとは何か? 世界史用語34
著作名: ピアソラ
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サヘラントロプスとは、約700万年前から約680万年前にかけて、アフリカ大陸の北中部に生息していた霊長類の一種です。この種は、2001年にチャドの砂漠で発見された頭蓋骨の化石に基づいて、2002年に新たな属と種として記載されました。サヘラントロプスは、ヒトとチンパンジーの分岐の時期に近く、ヒトの祖先または近縁種である可能性がありますが、その系統的位置や生態については、化石が不完全であるために、多くの議論があります。

サヘラントロプスの学名は、Sahelanthropus tchadensisです。属名のSahelanthropusは、出土地が属するサヘル地域と、古代ギリシア語で「人間」を意味するanthroposとの合成語で、「サヘルの人」という意味です。種小名のtchadensisは、出土国のチャドに由来するという意味で、最初に発見された頭蓋骨の化石は、トゥーマイという愛称で呼ばれています。これは、現地の言語で「生命の希望」という意味です。

サヘラントロプスの頭蓋骨は、ヒトとチンパンジーの両方の特徴を持っており、ヒトに似ている点としては、頭蓋の平らさ、顔の小ささ、眉間の突出、大後頭孔の下方位置などが挙げられます。これらの特徴は、直立二足歩行や脳の発達を示唆するものです。一方、チンパンジーに似ている点としては、頭蓋容積の小ささ(約320-380cc)、顎の突出、歯の大きさ、額の後退などが挙げられ、これらの特徴は、原始的な霊長類の形質であるといえます。

サヘラントロプスが直立二足歩行をしていたかどうかは、確実には分かっていません。頭蓋骨の大後頭孔の位置は、脊椎の角度や姿勢に関係しますが、それだけでは直立二足歩行の証拠とは言えません。サヘラントロプスの脚や足の化石は見つかっておらず、その歩行様式を推測することは困難です。2020年代になって、サヘラントロプスの大腿骨と尺骨の化石が分析されましたが、その結果は、サヘラントロプスが常に直立二足歩行をしていたというよりは、四足歩行や樹上生活に適応していたというものでした。これは、サヘラントロプスがヒトの祖先というよりは、ゴリラの祖先やヒトとチンパンジーの共通祖先である可能性を示唆するものです。

サヘラントロプスが生息していた時代は、ヒトとチンパンジーが分岐した時期に近いと考えられています。ヒトとチンパンジーの分岐の時期は、分子時計や化石記録に基づいて推定されるが、その範囲は約1300万年前から約400万年前までと幅広く、サヘラントロプスは、この分岐の前か後かによって、ヒトの系統に属するかどうかが変わります。サヘラントロプスの他にも、オロリンやアルディピテクスといった、約600万年前から約400万年前にかけての古い霊長類の化石が発見されていますが、これらの種との関係は、化石が断片的であるためにはっきりしていません。サヘラントロプスは、これらの種と同じ属や種である可能性もあります。

サヘラントロプスが生息していた地域は、現在ではサハラ砂漠となっていますが、当時は湿潤な環境であったと推定されており、森林や草原など、多様な生息地に適応していたと考えられています。サヘラントロプスは、ヒトの進化において重要な役割を果たしたかもしれませんが、その正体はまだ謎に包まれています。

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