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村上春樹『ノルウェイの森』のあらすじ・要約
著作名: 春樹
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はじめに

ここでは村上春樹の『ノルウェイの森』について要約しています。長編小説ですので、物語の中心人物(「僕」、「直子」、「みどり」)のやりとりを中心に要約しています。



ノルウェイの森

この物語は、主人公「わたなべ」が、自殺した友人「キヅキ」の恋人だった「直子」と、大学で仲良くなった「みどり」の2人の女性とのかかわりの中で「生と死」について考え成長していくストーリーを描いた作品です。ここでは主人公「わたなべ」のことを「僕」と表記していきます。

高校時代、「僕」の唯一の友人は「キヅキ」という同級生でした。「僕」は「わかりあえないぐらいならば、友人なんていない方がましだ」という考えの持ち主でしたので、「キヅキ」が文字通り唯一無二の友人でした。ある日キヅキがガールフレンドを「僕」に紹介します。それが「直子」でした。

僕、キヅキ、直子の関係は不思議で、キヅキと直子は2人でいるよりも、僕をあわせた3人でいるとを好みました。とはいえど僕と直子との間には共通の話題というものがなく、ほとんど会話はなかったのですが、キヅキが間に入ることで3人での会話がうまく成り立っていました。



そんなある日、キヅキは自宅で練炭自殺をしてしまいます。遺書もなく、なぜキヅキが自殺をしてしまったのかは、この作中で明かされることはありません。

キヅキという間に入ってくれる人を失った僕と直子は、必然的に会うこともなく高校を卒業していきます。僕は地元の神戸を出て東京の私立大学(早稲田大学と思われる)に入学をします。そして東京で中央線に乗っていたときに、たまたま直子に再会したのです。直子もまた、東京の大学(津田塾大学と思われる)へと進学していたのでした。

それからというもの、僕と直子はデートを重ねるようになります。(デートとは言っても、直子が歩くのを、僕が1歩後ろからひたすらついていくというものでしたが。)僕は直子のことが好きだったのですが、直子にその気はなく、2人は特に付き合っているという関係ではありませんでした。

そうした関係を続けている間に、直子は20歳の誕生日を迎えます。19歳から20歳に歳をとったということで、直子はとても思いつめることになります。恋人だったキヅキは17歳で自殺をして歳をとらないままなのに、自分は20代になってしまった。そのことがとても重く彼女にのしかかったのです。直子の家で誕生日パーティーをした翌日から、僕は直子と連絡がつかなくなってしまいます。直子はアパートを引き払い行方をくらましてしまったのです。



僕は直子に実家に手紙を書き、直子と連絡をとろうと努めましたが、結局彼女からの返事はありませんでした。僕が精神的にからっぽになっていた矢先、直子から「京都にある精神患者の療養施設に入った」という手紙が舞い込んできたのです。


さて、少し時間を戻しましょう。僕と直子がデートを続けていた時期に、僕はもう1人のヒロイン「みどり」と大学の授業を通して会います。みどりは文学部の1学年後輩の女の子で、小さな書店の娘でした。とても自由奔放な明るい少女なのですが、彼女のお母さんは脳腫瘍で数年前に亡くなっており、お父さんもまた同じ病気で入院をしていました。また、みどりにはボーイフレンドがいましたが、どうやらうまくいっていないようでした。僕とみどりは、2人で食事に行ったり、お父さんのお見舞いに付き添ったりする中で急接近するようになります。みどりは(口にはしませんが)、僕と付き合いたいという素振りをみせますが、僕は「片をつけなければならないことがある。それが片付くまで待ってくれないか」とみどりに言います。そう、僕は直子のことが忘れられなかったのです。



みどりと仲良くなってからも僕は、何度も直子のもとを訪れていました。直子が入っていた施設は阿美寮という名の施設で、そこで直子の担当医だった玲子さんと出会います。直子と玲子さんとのカウンセリングに参加させてもらった僕は、直子とキヅキが今でも心のどこかでつながっていることを知ります。直子は、キヅキが死後の世界から手招きをしている、そして僕ではなくキヅキの方に行きたいと思っていたこと、でもたまたま電車の中で僕と再会したことでそれができなくなったこと、僕が直子と生の世界をつなぎとめていたことを告白します。生と死は正反対のものではなく、生の中に死があるということをこのとき僕は実感しました。

しかしもう直子にとって、それを耐えるには限界がきていました。僕が阿美寮から帰ったあとに、直子は自殺をしてしまいます。結局直子は、僕ではなくキヅキを選んだのだと僕は絶望します。



すべてに片がついたところで僕はみどりに電話をかけます。「ようやくけりがついたよ」と。僕が直子と生の世界とをつなぎとめていたのと同じように、みどりは僕と生の世界をつなぎとめてくれていたのです。この物語におけるみどりの役割はそこにありました。そこに気付いたところで物語は終結します。

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