manapedia
更新日時:
枕草子 原文全集「成信の中将」
著作名: 古典愛好家
32,104 views

文野の少将もどきたる落窪の少将などはをかし。よべ、一昨日の夜もありしかばこそ、それもをかしけれ。足あらひたるぞにくき。きたなかりけむ。風などの吹き、あらあらしき夜来(き)たるは、たのもしくてうれしうもありなむ。
 

雪こそめでたけれ。

「忘れめや」


などひとりごちて、忍びたることはさらなり、いとさあらぬ所も、直衣などはさらにもいはず、うへのきぬ、蔵人の青色などの、いとひややかにぬれたらむは、いみじうをかしかべし。緑衫なりとも、雪にだにぬれなばにくかるまじ。昔の蔵人は、夜など人のもとにも、ただ青色をきて、雨にぬれても、しぼりなどしけるとか。今は昼だに着ざめり。ただ緑衫のみうちかづきてこそあめれ。衛府などのきたるは、まいていみじうをかしかりしものを。かく聞きて、雨にありかぬ人やあらむとすらむ。
 

月のいみじうあかき夜、紙のまたいみじう赤きに、ただ、

「あらずとも」


と書きたるを、廂にさし入りたる月にあてて、人の見しこそをかしかりしか。雨降らむをりは、さはありなむや。





1ページ
前ページ
3/3
次ページ


このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。