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アルタミラ 旧石器時代のスペインの洞窟絵画 世界史用語40 |
著作名:
ピアソラ
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アルタミラとは
アルタミラとは、スペインのカンタブリア州にある洞窟(遺跡)です。このアルタミラ洞窟に描かれた先史時代の壁画のことをアルタミラ洞窟絵画といいます。この洞窟絵画は、人類史上最古の芸術作品の一つとして、世界遺産に登録されています。
アルタミラ洞窟絵画の発見
アルタミラ洞窟絵画は、1879年にサウトゥオラという地主によって発見されました。彼は、洞窟の入り口付近にある先史時代の遺物に興味を持ち、洞窟の奥へと探検しました。そこで、彼は洞窟の天井に描かれたカラフルなバイソンの絵を目にしました。彼は、これらの絵が旧石器時代の人々によって描かれたものだと考え、1880年にその研究を発表しました。
しかし、当時の学界は、サウトゥオラの主張を受け入れませんでした。なぜなら、旧石器時代の人々は、抽象的な思考や芸術的な表現をする能力がないと考えられていたからです。また、洞窟絵画の技法や色彩があまりにも洗練されていたため、偽物だと疑われました。サウトゥオラは、自分の発見が認められないまま、1888年に亡くなりました。
その後、1902年に、フランスのドルドーニュ県にあるラ・ムース洞窟で、同様の洞窟絵画が発見されました。これにより、アルタミラ洞窟絵画の真実性が再評価されることになりました。さらに、その後の調査で、アルタミラ洞窟絵画は、約3万6000年前から1万4000年前にかけて、さまざまな時代の人々によって描かれたことが明らかになりました。アルタミラ洞窟絵画は、洞窟壁画の発見と研究の先駆けとなりました。
アルタミラ洞窟絵画の特徴
アルタミラ洞窟絵画は、約1000メートルの長さを持つ洞窟の中に、複数の場所に分散して描かれています。洞窟絵画の内容は、動物や人間の手、幾何学的な模様などがあります。動物の絵は、バイソン、シカ、ウマ、イノシシ、ヤギなどが描かれており、その数は約200にのぼります。人間の手は、手のひらや指を赤や黒の顔料で塗って、洞窟の壁に押し付けたもので、約70個が確認されています。幾何学的な模様は、線や点、波などが描かれており、その意味は不明です。
洞窟絵画の技法は、刻む、塗る、吹き付けるなどがあります。刻む技法は、洞窟の壁に石や骨などの道具で線を刻むもので、最も古い時代のものと考えられています。塗る技法は、顔料を水や動物の脂などで溶いて、手や筆などで洞窟の壁に塗るもので、動物の絵の多くがこの技法で描かれています。吹き付ける技法は、顔料を水で溶いて、手のひらや管などで洞窟の壁に吹き付けるもので、人間の手の絵の多くがこの技法で描かれています。
洞窟絵画の色彩は、赤や黒、黄色、茶色などがあります。顔料は、鉄酸化物や炭などの天然の物質を使って作られています。洞窟絵画の中でも、特に有名なのは、洞窟の天井に描かれたカラフルなバイソンの群れの絵です。この絵は、洞窟の天井の凹凸を巧みに利用して、バイソンの体の立体感や動きを表現しています。この絵は、洞窟絵画の最高傑作とも言われています。
アルタミラ洞窟絵画の意義
アルタミラ洞窟絵画は、人類史上最古の芸術作品の一つとして、人類の創造性や知性を示すものです。洞窟絵画は、旧石器時代の人々の生活や思考、信仰などを知るための貴重な資料でもあります。洞窟絵画が描かれた目的や意味は、現在でも完全には解明されていませんが、いくつかの説が提唱されています。例えば、以下のような説があります。
・狩猟の成功を祈願するために描いたという説。洞窟絵画の多くが、狩猟の対象となる動物であることから、この説が支持されています。
・儀式や崇拝の場として使ったという説。洞窟絵画が、洞窟の奥深くに描かれていることから、この説が支持されています。
・芸術的な表現として描いたという説。洞窟絵画の技法や色彩が洗練されていることから、この説が支持されています。
アルタミラ洞窟絵画の保存状況
アルタミラ洞窟絵画は、洞窟の中にあるため、外部の気候や光などの影響を受けにくく、比較的良好な状態で保存されてきました。しかし、20世紀に入ってから、洞窟絵画の観光化が進み、多くの人々が洞窟に入るようになりました。これにより、洞窟の内部環境が変化し、洞窟絵画にダメージを与える要因が増えました。例えば、以下のような問題が発生しました。
・洞窟に入る人々の呼吸や汗によって、洞窟の湿度や二酸化炭素濃度が上昇し、洞窟絵画の劣化やカビの発生を促進した。
・洞窟に入る人々の触れたり、落書きをしたり、写真を撮ったりすることによって、洞窟絵画に直接的な損傷を与えた。
・洞窟の入り口や通路の拡張や照明の設置などによって、洞窟の自然な形態や光環境が変化し、洞窟絵画の見え方や色合いが変わった。
これらの問題に対処するために、スペイン政府や専門家は、洞窟絵画の保護と公開のバランスをとるために、さまざまな対策を講じました。例えば、以下のような対策があります。
・洞窟の入場者数や滞在時間を制限し、洞窟の内部環境をモニタリングし、適切な温度や湿度を維持するために、空調システムや換気システムを導入した。
・洞窟絵画に触れたり、落書きをしたりすることを禁止し、洞窟絵画の清掃や修復を定期的に行った。
・洞窟の入り口や通路の改造を最小限にし、洞窟絵画の照明を自然光に近いものにした。
しかし、これらの対策も完全には洞窟絵画の劣化を防げないことが判明しました。特に、2002年に洞窟が一般公開された後、洞窟絵画に白い斑点が現れる現象が発見されました。この斑点は、洞窟の湿度の変化によって、洞窟の壁に含まれる石灰が結晶化したものと考えられています。この斑点は、洞窟絵画の色彩や質感を損なうだけでなく、洞窟絵画の表面を剥がす危険性もあります。
この問題に対処するために、2002年から2008年までの間、洞窟は一時的に閉鎖され、洞窟絵画の状態や原因を調査するプロジェクトが行われました。その結果、洞窟の内部環境を安定させるためには、洞窟の入場者数を1日に5人以下にする必要があることが分かりました。このことから、2010年に洞窟は再び一般公開されましたが、入場者は抽選で選ばれた5人のみとなりました。また、洞窟絵画の状態は引き続きモニタリングされています。
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