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平家物語原文全集「少将乞請 2」 |
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著作名:
古典愛好家
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舅の宰相の許へ出でられたれば、北方は近う産すべき人にておはしけるが、今朝よりこの嘆きをうち添へては、既に命も絶え入る心地ぞせられける。少将、御所を罷り出づるより、流るる涙つきせぬに、北方の有り様を見給ひては、いとどせんかたなげにぞ見えられける。少将の乳母に六条といふ女房あり。
「 御乳に参りはじめ候ひて、君をちの中より抱き上げ参らせ、月日の重なるにしたがひて、我が身の年のゆくことをば嘆かずして、君の大人しうならせ給ふ事をのみ、うれしう思ひ奉り、あからさまとは思へども、すでに廿一年はなれ参らせず。院・内へ参らせ給ひて遅う出だせ給ふだにも、おぼつかなう思ひ参らするに、いかなる御目にかあはせ給はんずらん」
と泣く。少将、
「いたうななげいそ。宰相さておはすれば、命ばかりはさりとも乞ひうけ給はんずらん」
となぐさめども、人目も知らず泣きもだへけり。
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