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大鏡『最後の除目・兼通と兼家の不和(この殿たちの兄弟の御中〜)』のわかりやすい現代語訳・和訳と解説 |
著作名:
走るメロス
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大鏡『最後の除目(兼通と兼家の不和)』の原文・現代語訳と解説
このテキストでは、大鏡の一節「最後の除目」の「この殿たちの兄弟の御中、〜)から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説を記しています。書籍によっては「兼通と兼家の不和」と題するものもあります。
大鏡とは
大鏡は平安時代後期に成立したとされる歴史物語です。藤原道長の栄華を中心に、宮廷の歴史が描かれています。
話を読む前におさえておきたいこと
冒頭の「殿たち」とは、堀河殿(藤原兼通)と東三条殿(藤原兼家)の兄弟であることを踏まえて読みましょう。
原文(本文)
この殿たちの兄弟の御中、年ごろの官位の劣り優りのほどに、御仲悪しくて過ぎさせ給ひし間に、堀河殿御病重くならせ給ひて、今は限りにておはしまししほどに、東の方に、先追ふ音のすれば、御前に候ふ人たち、
「誰ぞ。」
など言ふほどに、
「東三条殿の大将殿参らせ給ふ。」
と人の申しければ、殿聞かせ給ひて、
「年ごろ仲らひよからずして過ぎつるに、今は限りになりたると聞きて、とぶらひにおはするにこそは。」
とて、御前なる苦しきもの取りやり、大殿籠りたる所ひきつくろひなどして、入れ奉らむとて、待ち給ふに、
「早く過ぎて、内裏へ参らせ給ひぬ。」
と人の申すに、いとあさましく心憂くて、
「御前に候ふ人々も、をこがましく思ふらむ。おはしたらば、関白など譲ることなど申さむとこそ思ひつるに。かかればこそ、年ごろ仲らひよからで過ぎつれ。あさましくやすからぬことなり。」
とて、限りのさまにて臥し給へる人の、
「かき起こせ。」
とのたまへば、人々、あやしと思ふほどに、
と仰せらるれば、物のつかせ給へるか、うつし心もなくて仰せらるるかと、あやしく見奉るほどに、御冠召し寄せて、装束などせさせ給ひて、内裏へ参らせ給ひて、陣の内は君達にかかりて、滝口の陣の方より、御前へ参らせ給ひて、混明池の障子のもとにさし出でさせ給へるに、昼の御座に、東三条の大将、御前に候ひ給ふほどなりけり。
つづく:大鏡『最後の除目・兼通と兼家の不和(この大将殿は、堀河殿〜)』の現代語訳と解説
現代語訳(口語訳)
この殿たちご兄弟の仲についてですが、長年官位の優越を競っている間に、お2人の仲は悪くお過ぎになってしまいました。その間に堀河殿(藤原兼通)のお体の具合が重くなられて、もうこれが最期かという具合でいらっしゃったときに、東の方で先払いをする音が
したので、堀河殿の周りにいらっしゃる人たちは、
「誰がきたのでしょうか。」
となどと口にしています。そうしているうちに、
「東三条の大将殿がいらっしゃいます。」
と誰かが申したのを堀河殿はお聞きになられて、
「長年仲がよくないままでいたが、(私が)もうこれが最期な状態になっているというのを聞いて、見舞いにいらっしゃったのだろう。」
といって御前にある見苦しいものを片付け、おやすみになられている所を整頓などして、(東三条殿を部屋に)お入れ申し上げようと(堀河殿が)お待ちになられていました。(ところが)
「(東三条殿は屋敷の前を)とっくに過ぎて、御所へ参上なさいました。」
とある人が申すので、(堀河殿は)とても驚きあきれ不快に(思い)
「(東三条殿の)周りに仕える者たちも、みっともないと思っているだろう。(東三条殿の)がいらっしゃったら、関白の位を譲ることなどを申し上げようと思っていたのに。このようであるからこそ、長年、仲がよくないまま過ぎてしまったのだ。驚きあきれて平穏な気持ちではないことよ。」
と、死期が迫っている様子で臥せていらっしゃる人(堀河殿)が
「私をかつぎ起こせ。」
とおっしゃいます。周りの人々が変だと思っているうちに、
「牛車の支度をしなさい。先導する者を呼び集めなさい。」
と(堀河殿が)お命じになられるので、人々は、物の怪が(堀河殿に)おとりつきになったか、正気をなくしておっしゃっているのかと不思議に思って見申し上げています。(堀河殿は)冠をおかぶりになり、礼服などをお召になられて、御所へと参内なさいます。陣内は息子たちに寄りかかって(お歩きになり)、滝口の陣から帝の御前へと参上なさいます。昆明池の障子のあたりにお出になられたところ、昼の御座で、東三条の大将殿が、帝の前にいらっしゃるところでございます。
つづく:大鏡『最後の除目・兼通と兼家の不和(この大将殿は、堀河殿〜)』の現代語訳と解説
■次ページ:品詞分解と単語解説
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