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蜻蛉日記原文全集「心ちもくるしければ几丁へだててうちふす所に」 |
著作名:
古典愛好家
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蜻蛉日記
心ちもくるしければ几丁へだててうちふす所に
心ちもくるしければ、几丁へだててうちふす所に、ここにある人ひやうと寄りきていふ、
「なでしこの種とらんとしはべりしかどねもなくなりにけり、くれたけもひとすぢたふれてはべりし、つくろはせしかど」
などいふ。ただ今いはでもありぬべきことかなと思へば、いらへもせであるに、眠(ねぶ)るかと思ひし人いとよくききつけて、このひとつ車にて物しつる人の障子をへだててあるに、
「きい給ふや、ここにことあり。この世をそむきていへを出でて菩提をもとむる人に、只今ここなる人々がいふをきけば、
「なでしこはなで生(おほ)したりや、呉竹は立てたりや」
とはいふ物か」
「なでしこはなで生(おほ)したりや、呉竹は立てたりや」
とはいふ物か」
とかたれば、きく人いみじう笑ふ。あさましうをかしけれど、露ばかり笑ふけしきも見せず。
かかるに夜やうやう半(なか)ばばかりになりぬるに、
「方はいづかたかふたがる」
といふに、数ふればむべもなくこなたふたがりたりけり。
「いかにせん、いとからきわざかな。いざもろともに近き所へ」
などあれば、いらへもせで、あな物くるほし、いとたとしへなきさまにもあべかなるかなと、思ひふしてさらにうごくまじければ、
「さふりはへこそはすべかなれ。方あきなばこそは、まゐり来(く)べかなれと思ふに、例の六日の物忌みになりぬべかりけり」
など、なやましげに言ひつつ出でぬ。
つとめて文あり。
「夜ふけにければ心ちいとなやましくてなん。いかにぞ、はや落忌(としみ)をこそしたまひてめ。この大夫の、さもふつつかにみゆるかな」
などぞあめる。何かは、かばかりぞかしと思ひはなるる物から、物忌はてん日、いぶかしき心ちぞそひておぼゆるに、六日をすごして七月三日になりにたり。
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