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枕草子 原文全集「ある所に、なにの君とかや」 |
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著作名:
古典愛好家
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ある所に、なにの君とかや
ある所に、なにの君とかやいひける人のもとに、君達(きんだち)にはあらねど、その頃いたうすいたるものにいはれ、心ばせなどある人の、九月ばかりにいきて、有明のいみじう霧りみちておもしろきに、なごり思ひ出でられむと、ことばをつくして出づるに、いまはいぬらむと、とほくみおくるほど、えもいはず艶(えん)なり。出づるかたをみせて、たちかへり、立蔀(たてじとみ)の間に、かげにそひて立ちて、なほいきやらぬさまに、いまひとたびいひ知らせむと思ふに、
「有明の月のありつつも」
と、しのびやかにうちいひて、さしのぞきたる髪の、頭(かしら)にもよりこず、五寸ばかりさがりて、火をさしともしたるやうなりけるに、月の光もよほされて、おどろかるる心地のしければ、やをら出でにけり、とこそ語りしか。
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