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枕草子 原文全集「御方々、君達、上人など」
著作名: 古典愛好家
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御方々、君達、上人など

御方々、君達、上人など、御前に人のいとおほくさぶらへば、廂(ひさし)の柱によりかかりて、女房と物語などしてゐたるに、ものをなげ給はせたる。

あけて見たれば、

「思ふべしや、いなや。人、第一ならずはいかに。」


とかかせ給へり。


御前にて物語などするついでにも、

「すべて、人に一に思はれずは、なににかはせむ。ただいみじうなかなかにくまれ、あしうせられてあらむ。二三にては死ぬともあらじ。一にてをあらむ」


などいへば、

「一乗の法ななり」


など、人々もわらふことのすぢなめり。


筆紙など給はせたれば、

「九品蓮台(くほんれんだい)の間には、下品といふとも」


などかきて参らせたれば、

「むげに思ひ屈(くん)じにけり。いとわろし。いひとぢめつることは、さてこそあらめ」


とのたまはす。

「それは人にしたがひてこそ」


と申せば、

「そがわるきぞかし。第一の人にまた一に思はれむとこそ思はめ」


と仰せらるる、いとをかし。





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