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蜻蛉日記原文全集「ふりがたくあはれと見つつゆきすぎて」 |
著作名:
古典愛好家
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蜻蛉日記
ふりがたくあはれと見つつゆきすぎて
ふりがたくあはれと見つつゆきすぎて、山口にいたりかかれば、申(さる)のはてばかりになりにたり。蜩(ひぐらし)さかりと鳴きみちたり。聞けばかくぞおぼえける。
なきかへるこゑぞきほひてきこゆなる まちやしつらんせきのひぐらし
とのみいへる、人にはいはず。走井(はしりゐ)にはこれかれ馬うちはやしてさきだつもありて、いたりつきたれば、さきだちし人々いとよく休みすずみて、心ちよげにて、車かきおろすところに寄り来(き)たれば、後(しり)なる人
うらやましこまのあしとくはしりゐの
といひたれば、
清水にかげはよどむものかは
ちかく車よせて、おくなる方に幕などひきおろして、みな下りぬ。手足もひたしたれば、心ち物思ひはるけるやうにぞおぼゆる。石どもにおしかかりて、水やりたる樋のうへに折敷(おしき)どもすゑて、もの食ひて手づから水飯(すいは)などする心ち、いと立ちうきまであれど、日くれぬなどそそのかす。かかる所にては、物などいふ人もあらじと思へども、日の暮るればわりなくて立ちぬ。
行きもてゆけば、粟田山といふ所にぞ、京より松明(まつ)もちて人きたる。
「この昼、殿おはしましたりつ」
と言ふをきく。いとぞあやしき、なき間をうかがはれけるとまでぞおぼゆる。
「さて」
など、これかれ問ふなり。我はいとあさましうのみおぼえて、来着(きつ)きぬ。下りたれば、心ちいとせんかたなくくるしきに、とまりたりつる人々
「おはしまして問はせたまひつれば、ありのままになん聞こえさせつる。「などかこのごろありつる。あしうも来(き)にけるかな」となむありつる」
などあるを聞くにも、夢のやうにぞおぼゆる。
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