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イスラム世界の歴史 2 正統カリフ時代とアラブ帝国 |
著作名:
ピアソラ
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アブー=バクルのカリフ即位と正統カリフ時代のはじまり
632年、ムハンマドが死去すると、ムハンマドの義父アブー=バクル(在位632~634)がカリフという地位につきます。これ以降4代にわたって正統カリフ時代がはじまります。
カリフというのは、預言者ムハンマドの後継者で、彼が持っていたウンマ(イスラム共同体)の宗教的権限と政治的権限のうち、政治的権限だけを継承した指導者です。
632年から661年まで、首都はメディナに置かれたままでした。メッカではないことに注意しましょう。
アブー=バクルがカリフに即位すると、各地のアラブ民族の中に離反する者が出て来ました。アラブの伝統的な部族は、ムハンマド個人との契約によって盟約が成立していたと考えていたからです。
この時以降アブー=バクルは、イスラム教以外の離反者や異教徒を征服するジハード(聖戦)を行うようになります。
ジハード(聖戦)は異教徒に対する戦いで、イスラム世界の防衛と拡大のために行われました。イスラム教徒に課せられた義務の一つで、戦死者は殉教者として天国に行くことができるとされたことから、イスラム戦士の士気は高く、周辺諸国と比べてもイスラム軍は圧倒的な強さを誇っていました。
第2代正統カリフ ウマル
634年にアブー=バクルが病死すると、第二代カリフにウマル(在位634~644)が即位します。
ウマルは強力なイスラム軍を率いて、642年ニハーヴァンドの戦いでササン朝ペルシアに勝利し、その後651年にササン朝ペルシアは滅亡、同時にビザンツ帝国とも戦い、その影響下にあったシリアやエジプトを征服しました。
(ウマル時代のイスラム共同体の領域)
ウマルは、ニハーヴァンドの戦いで、ササン朝ペルシアを事実上滅ぼしたカリフとして覚えておきましょう!
征服した土地では、アラブ人ムスリムが非常に優遇されます。
彼らは、アラブ人以外のムスリムやイスラム教徒以外の征服地の住民を支配するために、ハラージュ(地租)とジズヤ(非改宗者に課せられる税)を徴収する制度を作りました。
各征服地にはミスルという軍営都市が次々に作られ、アーミル(徴税官)と、軍事責任者としてアミール(総督)が派遣されます。
ミスル(軍営都市)の代表例はイラク南部のバスラやクーファ、エジプトのフスタート、チュニジアのカイラワーンなどがあります。
ウマルは各地から規則的な徴税を開始し、集められた税をアター(俸給)としてイスラーム共同体の有力者やイスラム戦士たちに支給する中央集権的な国家体制を築きます。
この頃のイスラム世界はアラブ人を中心としたものだったので、アラブ帝国と呼ばれました。
第3代正統カリフ ウスマーン
広大な征服活動を行ったウマルでしたが、最後は暗殺されてしまいます。その後第3代カリフに即位したのがウスマーン(在位644~656)です。クライシュ族の中でも、ムハンマドの生家ハーシム家と並ぶウマイヤ家出身のカリフです。
ウスマーンの時代に、コーランが編纂されるなどイスラム教の教義が確立していきますが、同族を優遇した政治を行ったことから、反対勢力に暗殺されてしまいます。
第4代正統カリフ アリー
ウスマーン暗殺後即位したのが、第4代カリフのアリー(在位656~661)です。
アリーはムハンマドの従兄弟(いとこ)で、ムハンマドの娘ファーティマと結婚しました。
アリーは預言者ムハンマドの血統を受け継ぐ正統な後継者とされていましたが、この頃、アラブ帝国の拡大とともに、カリフの権力が大きくなるにつれて、イスラム共同体の内部で、熾烈な権力争いが起こるようになっていました。
アリーと敵対したのが、征服地シリアの総督だったムアーウィヤでした。ムアーウィアは、クライシュ族ウマイヤ家出身で、アリーと戦っていました。
第4代正統カリフのアリーは、次第にムアーウィアとの妥協点を見出そうとするんですが、これに不満を持ったハワーリジュ派(離脱者たちという意味)という一派が、アリーの妥協的な態度を批判し、最終的にアリーを暗殺してしまいます。
このアリー暗殺の以降、正統な選挙でのカリフ選出がなくなったことから、正統カリフ時代が終わります。
そして、その後ムアーウィア(在位661~680)はシリアのダマスカスを都にして、ウマイヤ朝を開き、イスラム世界は新しい展開を見せ始めます。
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