|
|
|
更新日時:
|
|
![]() |
租庸調制(唐)とは わかりやすい世界史用語640 |
著作名:
ピアソラ
474 views |
租庸調制(唐)とは
唐の時代における租庸調制は、唐王朝(618-907年)の財政制度であり、農民を中心に国家の収入源を確保する重要な仕組みでした。この制度は、隋(581-618年)の均田制と密接に関連しており、土地を分配し、それに基づいて納税を求めるものでした。租庸調制は主に三つの要素で構成されており、各要素により税負担の異なる側面を規定していました。
まず「租」は土地税を意味し、農民が所有または耕作する土地の面積に応じて穀物を納めるものでした。唐の財政は主に農業生産に依存していたため、租は国家にとって重要な収入源でした。農民は1年の収穫の一定割合を政府に納める必要があり、この税は主に地方の官僚を通じて徴収されました。均田制に基づく田地の支給に対して、粟(穀物)2石を納める義務を負いました。租は穀物を納める税でしたが、当時の唐の基盤となった華北の主食は粟であり、租の本色(基本的な納税物)は粟とされていました。
次に「庸」は、労役またはその代わりとなる物資の提供を意味しました。農民は国家のために一定の日数、労働力を提供する義務がありましたが、これを免除するためには、布や絹などの物資を納めることで代替することができました。これは主に国土整備や防衛に関連する労働として求められ、国家建設に直接寄与するものでした。律令においては、本来は年間20日の労役の義務があり、それを「正役」と称しました。正役を免れるために収める税が庸でしたが、唐代中期以後は庸を納めることが一般化しました(雑徭2日分が正役1日分と換算されたため、雑徭を年間40日を行った者はその年の正役も庸も免除され、庸を正役20日分納めた者は雑徭も40日分免除されました)。正役1日に対し絹3尺あるいは布3.75尺を収めることとされていました。
最後に「調」は、主に絹や綿、布などの手工業製品を納めるものでした。農民は地域特産の手工業品を政府に納め、これが唐の時代における貿易や国家運営に利用されました。特にこの調は、地方の資源を活用して国家財政に貢献する役割を担っていました。調は、絹(絹織物)2丈と綿(真綿)3両を収めることとされていました。
この租庸調制は、唐の中央集権体制と結びついており、地方の資源を効率的に集め、中央政府の強力な運営を支える仕組みでした。特に均田制に基づく農民への土地分配は、農村部での安定をもたらし、唐の全盛期において広範囲にわたる地域支配を可能にしました。しかし、均田制が崩壊し、土地の集中や不平等が進行するにつれ、租庸調制も機能不全に陥り、後の税制度改革の必要性が高まっていきました。
唐の中期以降、租庸調制は徐々に効果を失い、税収の低下や農民の負担増加が問題となりました。特に安史の乱(755-763年)以降、国家の財政運営において抜本的な改革が求められ、唐末期には新たな税制である両税法が導入されました。この制度は、納税を土地ではなく所得や財産に基づいて課税するもので、中央政府の収入をより安定させる狙いがありました。
総じて、租庸調制は唐の時代における重要な財政基盤であり、農村社会を支える重要な制度でしたが、社会的、経済的な変化に伴い、その有効性が失われ、制度改革が必要となったのです。
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
均田制(唐)とは わかりやすい世界史用語639
>
力役と雑徭とは わかりやすい世界史用語641
>
三省とは わかりやすい世界史用語632
>
サマルカンドとは わかりやすい世界史用語752
>
科挙(唐)とは わかりやすい世界史用語642
>
武周とは わかりやすい世界史用語700
>
中宗とは わかりやすい世界史用語701
>
最近見たテキスト
租庸調制(唐)とは わかりやすい世界史用語640
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング
世界史
- 先史時代
- 先史時代
- 西アジア・地中海世界の形成
- 古代オリエント世界
- ギリシア世界
- ヘレニズム世界
- ローマ帝国
- キリスト教の成立と発展
- アジア・アメリカの古代文明
- イラン文明
- インドの古代文明
- 東南アジアの諸文明
- 中国の古典文明(殷・周の成立から秦・漢帝国)
- 古代の南北アメリカ文明
- 東アジア世界の形成と発展
- 北方民族の活動と中国の分裂(魏晋南北朝時代)
- 東アジア文化圏の形成(隋・唐帝国と諸地域)
- 東アジア諸地域の自立化(東アジア、契丹・女真、宋の興亡)
- 内陸アジア世界の形成
- 遊牧民とオアシス民の活動
- トルコ化とイスラーム化の進展
- モンゴル民族の発展
- イスラーム世界の形成と拡大
- イスラーム帝国の成立
- イスラーム世界の発展
- インド・東南アジア・アフリカのイスラーム化
- イスラーム文明の発展
- ヨーロッパ世界の形成と変動
- 西ヨーロッパ世界の成立
- 東ヨーロッパ世界の成立
- 西ヨーロッパ中世世界の変容
- 西ヨーロッパの中世文化
- 諸地域世界の交流
- 陸と海のネットワーク
- 海の道の発展
- アジア諸地域世界の繁栄と成熟
- 東アジア・東南アジア世界の動向(明朝と諸地域)
- 清代の中国と隣接諸地域(清朝と諸地域)
- トルコ・イラン世界の展開
- ムガル帝国の興隆と衰退
- ヨーロッパの拡大と大西洋世界
- 大航海時代
- ルネサンス
- 宗教改革
- 主権国家体制の成立
- 重商主義と啓蒙専制主義
- ヨーロッパ諸国の海外進出
- 17~18世紀のヨーロッパ文化
- ヨーロッパ・アメリカの変革と国民形成
- イギリス革命
- 産業革命
- アメリカ独立革命
- フランス革命
- ウィーン体制
- ヨーロッパの再編(クリミア戦争以後の対立と再編)
- アメリカ合衆国の発展
- 19世紀欧米の文化
- 世界市場の形成とアジア諸国
- ヨーロッパ諸国の植民地化の動き
- オスマン帝国
- 清朝
- ムガル帝国
- 東南アジアの植民地化
- 東アジアの対応
- 帝国主義と世界の変容
- 帝国主義と列強の展開
- 世界分割と列強対立
- アジア諸国の改革と民族運動(辛亥革命、インド、東南アジア、西アジアにおける民族運動)
- 二つの大戦と世界
- 第一次世界大戦とロシア革命
- ヴェルサイユ体制下の欧米諸国
- アジア・アフリカ民族主義の進展
- 世界恐慌とファシズム諸国の侵略
- 第二次世界大戦
- 米ソ冷戦と第三勢力
- 東西対立の始まりとアジア諸地域の自立
- 冷戦構造と日本・ヨーロッパの復興
- 第三世界の自立と危機
- 米・ソ両大国の動揺と国際経済の危機
- 冷戦の終結と地球社会の到来
- 冷戦の解消と世界の多極化
- 社会主義世界の解体と変容
- 第三世界の多元化と地域紛争
- 現代文明
- 国際対立と国際協調
- 国際対立と国際協調
- 科学技術の発達と現代文明
- 科学技術の発展と現代文明
- これからの世界と日本
- これからの世界と日本
- その他
- その他