フルリ人とは、青銅器時代に古代オリエントで活躍した民族です。彼らは北メソポタミア、アナトリア東部、北シリアなどに居住し、フルリ語という膠着語を話しました。彼らの起源や系統は不明ですが、ウラルトゥ語や北東コーカサス語との関連が指摘されています。彼らは自らの王国を築き、ヒッタイト、エジプト、バビロン、アッシリアなどの強国と交流や争いを行いました。彼らの文化はヒッタイトやウラルトゥにも影響を与えましたが、鉄器時代に入ると他の民族に同化されて消滅しました。

フルリ人の最初の記録は紀元前3千年紀後半のアッカド帝国の文書に見られます。彼らはおそらくカフカス山脈の南麓からティグリス川を越えてメソポタミアに侵入したと考えられます。彼らはハブール川流域やザグロス山脈の麓に肥沃な農地を占め、ウルケシュという都市を中心に最初の王国を建設しました。しかし、この王国は紀元前2千年紀初頭にアムル人の王国に征服されました。

その後、フルリ人は西方に移動し、北シリアやアナトリアにも入植しました。彼らはヤムハドというアムル人・フルリ人の王国を築き、ヒッタイトの初期の王と争いました。また、キズワトナという地方にも住み着き、ヒッタイトと同盟を結びました。ヒッタイトはフルリ人の文化や神話を取り入れ、フルリ人の王女を妃に迎えました。

フルリ人が最も強力で影響力のあった王国はミタンニでした。ミタンニは紀元前15世紀頃にハブール川流域から拡大し、シリアやメソポタミアの一部を支配しました。ミタンニの王はアーリア人と呼ばれるインド・イラン系の言語を話す貴族であり、インド・イラン系の神々を崇拝しました。ミタンニはエジプトと友好関係を結び、王家の婚姻も行いました。しかし、紀元前14世紀にヒッタイトとアッシリアによって滅ぼされました。

フルリ人のもう一つの王国はアラプハでした。アラプハはチグリス川の東にあるキルクーク近くの地域にありました。アラプハの遺跡からはフルリ人の生活や宗教に関する多くの粘土板が発見されています。アラプハはミタンニの属国となり、紀元前14世紀にアッシリアによって破壊されました。

紀元前13世紀にはフルリ人の王国はすべて滅亡し、フルリ人は他の民族に同化されました。彼らの言語は死語となり、その系統は不明です。ただし、アルメニアの山中にあったハヤサという王国はフルリ人の末裔と考えられ、ウラルトゥ王国の建国に関わったという説もあります。

フルリ人は青銅器時代のオリエントの歴史において重要な役割を果たした民族です。彼らは多様な文化や民族と交流し、独自の文化や言語を発展させました。彼らの遺産はヒッタイトやウラルトゥなどの後継者に受け継がれ、現代の研究者に多くの知見を与えています。