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平家物語原文全集「座主流 2」 |
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著作名:
古典愛好家
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同じき十八日、太政大臣以下の公卿十三人参内して、陣の座につき、先の座主、罪科の事議定あり。八条中納言長方卿、その時はいまだ左大弁宰相にて末座に候はれけるが申されけるは、
「法家の勘状にまかせて、死罪一等を減じて遠流せらるべしと見えて候へども、前座主明雲大僧正は、顕密兼学して、浄行持律のうへ、大乗妙経を公家に授けたてまつり、菩薩浄戒を法皇にたもたせたてまつる、御経の師、御戒の師、重科におこなはれん事、冥の照覧はかりがたし。還俗・遠流をなだめらるべきか」
と、はばかるところもなう申されければ、当座の公卿みな、
「長方の儀に同ず」
と申しあはれけれども、法皇の御いきどほり深かりしかば、なほ遠流に定めらる。太政入道もこの事申さんとて院参せられたりけれども、法皇、御風の気(け)とて、御前へも召され給はねば、本意なげにて退出せらる。僧を罪する習ひとて、土円を召し返し、還俗せさせたてまつり、大納言大輔藤井の松枝といふ俗名をぞつけられける。
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