manapedia
更新日時:
蜻蛉日記原文全集「中の十日のほどに」
著作名: 古典愛好家
8,990 views
蜻蛉日記

中の十日のほどに

中の十日のほどに、この人々、方わきて、小弓のことせんとす。かたみに出居(いでゐ)などぞしさわぐ。しりへの方のかぎり、ここにあつまりて馴らす日、女方に賭物乞ひたれば、さるべき物やたちまちにおぼえざりけむ、わびざれに、あをき紙を柳の枝にむすびつけたり。

山風のまへこそふけばこの春の やなぎのいとはしりへにぞよる

返し、口々したれど、わするるほどおしはからなむ。ひとつはかくぞある。

かずかずにきみかたよりてひくなれば 柳のまゆも今ぞひらくる

「つごもりがたにせん」


とさだむるほどに、世の中に、いかなるとがまさりたりけむ、天下の人ながるると、ののしること出で来て、まぎれにけり。




このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。