更新日時:
|
|
枕草子 原文全集「はしたなきもの」 |
|
著作名:
古典愛好家
11,701 views |
はしたなきもの。こと人をよぶに、我ぞとてさしいでたる。ものなどとらするをりは、いとど。おのづから人の上などうちいひそしりたるに、おさなき子どものききとりて、その人のあるにいひいでたる。
あはれなることなど、人のいひいで、うち泣きなどするに、げにいとあはれなり、など聞きながら、涙のつといでこぬ、いとはしたなし。なき顔つくり、けしきことになせど、いとかひなし。めでたきことをみきくには、まづただいで来(き)にぞいで来(く)る。
八幡の行幸(みゆき)のかへらせ給ふに、女院の御桟敷のあなたに御輿とどめて、御消息申させ給ふ。世に知らずいみじきに、まことにこぼるばかり、化粧じたる顔、みなあらはれて、いかに見ぐるしからむ。宣旨の御使にて、斉信(ただのぶ)の宰相中将の、御桟敷へ参り給ひしこそ、いとをかしう見えしか。ただ随身(ずいじん)四人、いみじう装束きたる馬副(うまぞひ)の、ほそく白くしたてたるばかりして、二条の大路の広くきよげなるに、めでたき馬をうちはやめて、いそぎ参りて、すこし遠くよりおりて、そばの御簾の前にさぶらひ給ひしなど、いとをかし。御返うけたまはりて、またかへり参りて、御輿のもとにて奏し給ふほど、いふもおろかなり。
さてうちのわたらせ給ふを、見たてまつらせ給ふらむ御心地、思ひやり参らするは、とびたちぬべくこそおぼえしか。それには長泣きをして笑はるるぞかし。よろしき人だに、なほ子のよきは、いとめでたきものを。かくだに思ひ参らするも、かしこしや。
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
枕草子 原文全集「無徳なるもの/修法は」
>
枕草子 原文全集「関白殿、黒戸より」
>
枕草子 原文全集「つれづれなるもの/つれづれなぐさむもの」
>
蜻蛉日記原文全集「山路なでふことなけれど」
>
枕草子 原文全集「近うて遠きもの/遠くて近きもの」
>
蜻蛉日記原文全集「ついたちの日をさなき人をよびて」
>
枕草子 原文全集「いみじう暑きころ」
>
最近見たテキスト
枕草子 原文全集「はしたなきもの」
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング
注目テキスト