新規登録 ログイン

5_80 世界の様々な地域 / 各国の名称と位置・大陸

「コロンビア共和国」について調べてみよう

著者名: 早稲男
Text_level_1
マイリストに追加
コロンビア共和国

コロンビア共和国(以下「コロンビア」、英語ではRepublic of Colombia)は、南アメリカ北西部に位置する共和制国家です。首都はボゴタです。

このテキストでは、コロンビアの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。


1.国土:驚異的な多様性を秘めた大地

ALT

コロンビアの国土面積は約114万平方キロメートル(日本の約3倍)に及び、南米大陸で4番目の広さを誇ります。地理的には、東隣にベネズエラ、南東にブラジル、南にペルー、南西にエクアドル、北西にパナマが位置します。さらに、北岸はカリブ海、西岸は太平洋に開けており、南米大陸で、太平洋と大西洋の双方に面しているのはこの国だけです。その最大の特徴は、驚くほど多様な地形と気候が存在することです。

アンデス山脈地域

国土を南北に縦断するアンデス山脈は、東、中央、西の三つの山脈に分かれ、標高5,000メートルを超える高峰から、肥沃な高原、深い渓谷まで、変化に富んだ景観を生み出しています。首都ボゴタ(標高約2,640m)をはじめとする主要都市の多くがこの地域に位置し、冷涼な気候から温暖な気候まで、標高によって多様な気候帯が存在します。

カリブ海沿岸地域

北部に広がるこの地域は、美しいビーチ、歴史的な港町カルタヘナ、そして国内最高峰のシエラネバダ・デ・サンタマルタ山(標高約5,775m)を擁します。高温多湿な熱帯気候が特徴で、陽気な文化が育まれてきました。

太平洋沿岸地域

西部に位置し、熱帯雨林が広がる高温多湿な地域です。降水量が多く、生物多様性に富んでいますが、人口密度は比較的低い地域です。豊かなマングローブ林や、ザトウクジラが繁殖のために訪れることでも知られています。

オリノキア平原(リャノ)地域

東部に広がる広大なサバンナ地帯で、「リャノ」と呼ばれます。牧畜が盛んで、独自の文化を持つ地域です。雨季と乾季が明確に分かれています。

アマゾン熱帯雨林地域

南東部に広がり、国土の約3分の1を占める広大な熱帯雨林地帯です。世界最大級の生物多様性を誇り、多くの先住民コミュニティが暮らしています。

この地理的な多様性は、コロンビアを世界でも有数の生物多様性を持つ国の一つにしています。国際的な環境NGOコンサベーション・インターナショナルによると、コロンビアはブラジルに次いで世界で2番目に生物多様性が豊かな「メガダイバース国家」とされています。ランの種類は世界一、鳥類の種類も世界一(約1,900種以上)を誇り、その他にも多種多様な動植物が生息しています。この豊かな自然環境は、国立公園などを通じて保護されています。



2.人口と人種:多様なルーツが融合する社会

コロンビアの総人口は、約5,221万人(2023年推定)です。人口の多くはアンデス山脈地域やカリブ海沿岸地域の都市部に集中しています。

コロンビア社会の大きな特徴は、その人種・民族構成の多様性です。長年にわたる歴史の中で、ヨーロッパ系(主にスペイン人)、アフリカ系、そして先住民(インディヘナ)の血が混ざり合い、独自の文化を形成してきました。CIA World Factbookによると、主な民族構成は以下のようになっています。

・メスティーソ(ヨーロッパ系と先住民の混血)および白人合わせて:約87.6%

・アフリカ系(ムラート(黒人と白人の混血)を含む):約6.8%

・先住民:約4.3%

・その他:約1.3%

これらの数字は大まかな分類であり、国内には100を超える多様な先住民グループが存在し、それぞれの言語や文化を守りながら暮らしています。また、アフリカ系のコミュニティは特にカリブ海沿岸や太平洋沿岸地域に多く、音楽、舞踊、食文化などに大きな影響を与えています。コロンビア憲法(1991年制定)は、国の多文化主義と多民族性を認め、先住民やアフリカ系住民の権利を保障しています。この多様なルーツを持つ人々が共存し、互いの文化を尊重しながら、今日のコロンビア社会を形作っています。


3.言語:スペイン語と多様な地域言語

コロンビアの公用語はスペイン語です。南米の多くの国々と同様、スペイン植民地時代の影響を強く受けています。しかし、コロンビアで話されるスペイン語は、地域によってアクセントや語彙に違いがあり、特に首都ボゴタで話されるスペイン語は、比較的明瞭で聞き取りやすいと評価されることもあります。

公用語のスペイン語以外にも、コロンビアの多文化性を反映して、多様な言語が話されています。

先住民言語

コロンビア国家統計局(DANE)によると、国内には65以上の異なる先住民言語が存在します。これらの言語は、それぞれの民族グループによって大切に受け継がれていますが、話者数の減少など、存続の危機に瀕している言語も少なくありません。政府はこれらの言語の保護と振興にも努めています。代表的なものには、ワユー語、エンベラ語、ナーサ・ユウェ語などがあります。

クレオール言語

カリブ海に浮かぶサン・アンドレス島、プロビデンシア島、サンタ・カタリナ島では、英語をベースとしたクレオール言語(サン・アンドレス・プロビデンシア・クレオール)が話されています。また、サン・バシリオ・デ・パレンケ村(ユネスコ無形文化遺産)では、アフリカのバントゥー諸語の影響を受けたスペイン語ベースのクレオール言語(パレンケロ語)が話されており、文化的に非常に重要な言語とされています。

これらの多様な言語の存在は、コロンビアの豊かな文化的多様性を象徴しています。


4.主な産業:資源と農産物に支えられる経済

コロンビアは、豊富な天然資源と多様な農産物に支えられた経済を有しています。世界銀行によると、コロンビアは中南米地域において有数の経済規模を誇ります。

鉱業

コロンビア経済の重要な柱の一つです。

石油

主要な輸出品目であり、経済を支える重要な資源です。

石炭

世界有数の石炭輸出国の一つです。特にカリブ海沿岸のセロホン炭鉱は世界最大級の露天掘り炭鉱として知られています。

鉱石(エメラルドなど)

世界最高品質と評されるエメラルドの産地として世界的に有名であり、世界の産出量の大きなシェアを占めています。その他、金、ニッケルなども産出されます。

農業

多様な気候帯を活かし、様々な農産物が生産されています。

コーヒー

コロンビアコーヒーは、その品質の高さで世界的に知られています。「コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)」による品質管理とブランディング戦略が成功し、マイルドコーヒーの代名詞となっています。アンデス山脈地域の「コーヒー生産地域の文化的景観」はユネスコ世界遺産にも登録されています。

花き

バラ、カーネーション、キクなどを中心に、世界有数の花き輸出国です。特に米国や日本への輸出が多くなっています。

その他

バナナ、サトウキビ、パーム油、米、ジャガイモなども重要な農産物です。

製造業

食品加工、繊維、化学製品、自動車部品などの分野が成長しています。

サービス業

近年、金融、通信、観光などのサービス業がGDPに占める割合を高めており、経済の多角化が進んでいます。

近年、コロンビア政府は経済の多角化、インフラ整備、海外からの投資誘致、国内の治安改善などに力を入れており、持続的な経済成長を目指しています(例:2023年の実質GDP成長率は0.6%(世界銀行、2024年4月時点予測))。主要な貿易相手国は、アメリカ合衆国、中国、欧州連合(EU)、そして近隣の中南米諸国です。


5.主な観光地:歴史、自然、文化が彩る旅

コロンビアは、その多様な自然環境、豊かな歴史、活気ある文化を反映した、魅力的な観光地に恵まれています。治安の改善とともに、近年ますます多くの観光客が訪れるようになりました。

首都ボゴタ

アンデス山脈の高原に位置する、国内最大の都市。スペイン植民地時代の美しい街並みが残る旧市街(ラ・カンデラリア地区)、世界的に有名な黄金博物館(ムセオ・デル・オロ)、ボテロ博物館、モンセラッテの丘からの絶景などが楽しめます。

カルタヘナ

カリブ海に面した美しい港町。城壁に囲まれた旧市街は「カルタヘナの港、要塞、歴史的建造物群」としてユネスコ世界遺産に登録されており、色鮮やかなコロニアル建築、石畳の道、活気ある広場が訪れる人々を魅了します。

メデジン

かつては治安の悪さで知られましたが、近年目覚ましい発展を遂げ、「永遠の春の街」と呼ばれる温暖な気候と、革新的な都市開発(ケーブルカーなど)、毎年8月に開催される華やかな「花祭り(フェリア・デ・ラス・フローレス)」で有名です。近郊には、巨大な一枚岩エル・ペニョールや、美しいグアタペの町があります。

コーヒー生産地域の文化的景観(コーヒー三角地帯)

アルメニア、マニサレス、ペレイラを中心とする地域で、美しいコーヒー農園(フィンカ)が広がり、伝統的なコーヒー栽培の文化に触れることができます。宿泊可能な農園も多く、コーヒーの試飲や栽培体験が楽しめます。ユネスコ世界遺産にも登録されています。

タイロナ国立公園

カリブ海沿岸に位置し、シエラネバダ・デ・サンタマルタ山の麓に広がる国立公園。ジャングルと美しいビーチが融合した絶景が広がり、ハイキングや海水浴が楽しめます。先住民の遺跡も残されています。

サン・アグスティン遺跡公園

南部のウイラ県にある、南米最大級の宗教的記念碑と巨石彫刻群が集まる遺跡。紀元1世紀から8世紀にかけて栄えた未知の文化の遺産であり、ユネスコ世界遺産に登録されています。

アマゾン地域

レティシアを拠点に、広大なアマゾン川流域の熱帯雨林を探検できます。ジャングルクルーズ、動植物観察、先住民コミュニティ訪問など、貴重な体験が可能です。
サン・アンドレス島、プロビデンシア島: カリブ海に浮かぶリゾートアイランド。「七色の海」と呼ばれる美しい海でのダイビングやシュノーケリングが人気です。

これらはほんの一例であり、コロンビアにはまだまだ知られざる魅力的な場所が無数に存在します。


6.文化:情熱的なリズムと豊かな創造性

コロンビア文化は、先住民、ヨーロッパ、アフリカの要素が融合し、地域ごとに多様な表情を見せます。その根底には、陽気で情熱的な国民性が流れています。

音楽と舞踊

コロンビアは音楽とダンスが生活に深く根付いた国です。

クンビア

カリブ海沿岸発祥の、アフリカ、先住民、ヨーロッパの要素が混ざり合ったリズムとダンス。コロンビアを代表する音楽ジャンルの一つです。

バジェナート

アコーディオン、カハ(太鼓)、グァチャラカ(ギロのような楽器)で演奏される、カリブ海沿岸、特にバジェドゥパル地方発祥の音楽。物語性のある歌詞が特徴で、ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。

サルサ

特に太平洋沿岸の都市カリは「サルサの首都」と呼ばれるほど、サルサが盛んです。独特の速いステップが特徴の「カリ・スタイル」のサルサが有名です。

その他、アンデス地方のバンブーコ、パシージョ、リャノ地方のホローポなど、地域ごとに多様な音楽とダンスが存在します。

文学

コロンビアは、ノーベル文学賞作家ガブリエル・ガルシア=マルケス(代表作『百年の孤独』)を生んだ国として、世界的に知られています。彼の作品に代表される「マジックリアリズム」は、ラテンアメリカ文学の重要な潮流となりました。

食文化

地域ごとに特色ある料理が楽しめます。

アヒアコ

首都ボゴタの伝統的なスープ。鶏肉と数種類のジャガイモ、トウモロコシを煮込み、ケッパーやアボカド、クリームを添えて食べます。

バンデハ・パイサ

アンティオキア地方(メデジン周辺)の代表的な料理。豆の煮込み、白米、ひき肉、チョリソー、豚バラ肉のフライ(チチャロン)、目玉焼き、プランテン(料理用バナナ)、アボカドなどが一皿に盛られたボリューム満点の料理です。

アレパ

トウモロコシの粉で作るパンケーキのようなもので、コロンビア全土で食べられる主食の一つ。チーズや肉、卵などを挟んで食べます。
その他、魚介を使ったカリブ海沿岸料理、アマゾンならではの食材を使った料理など、バラエティ豊かです。もちろん、高品質なコロンビアコーヒーも欠かせません。

祭り

国民の陽気な気質を反映し、各地で盛大な祭りが開催されます。

バランキージャのカーニバル

カリブ海沿岸の都市バランキージャで、カトリックの四旬節の前に開催される、ブラジルのリオ、イタリアのヴェネツィアと並び称されることもある大規模なカーニバル。ユネスコ無形文化遺産に登録されています。

メデジンの花祭り(フェリア・デ・ラス・フローレス)

毎年8月に開催され、色とりどりの花で飾られた巨大な飾り(シジェタ)を担いで歩くパレードが有名です。

その他、カリのフェリア・デ・カリ(サルサ祭り)、パストの黒と白のカーニバル(ユネスコ無形文化遺産)など、年間を通じて様々な祭りが行われます。

手工芸品

モチラバッグ(ワユー族の編みバッグ)、ソンブレロ・ vueltiao(シヌー族の帽子、国のシンボルの一つ)、木彫り、陶器など、地域ごとに特色ある美しい手工芸品が作られています。


7.スポーツ:サッカーへの情熱と多様な活躍

コロンビアで最も人気のあるスポーツはサッカーです。国民のサッカーに対する情熱は非常に高く、FIFAワールドカップなどの国際大会では国中が熱狂に包まれます。カルロス・バルデラマ、ファウスティーノ・アスプリージャ、ラダメル・ファルカオ、ハメス・ロドリゲスなど、世界的に有名な選手を数多く輩出してきました。国内リーグも高い人気を誇ります。

サッカー以外にも、以下のスポーツが盛んです。

サイクリング

アンデス山脈の厳しい地形が、多くの優れたクライマー(登坂を得意とする選手)を生み出してきました。ナイロ・キンタナやエガン・ベルナル(ツール・ド・フランス、ジロ・デ・イタリア優勝者)など、世界トップレベルで活躍する選手がいます。

重量挙げ

オリンピックなどの国際大会で、コロンビアの選手がメダルを獲得することが多い競技です。

ボクシング

世界チャンピオンを輩出してきた歴史があります。

テホ(Tejo)

火薬を使った的当てゲームで、コロンビアの国技とされています。友人や家族とビールを飲みながら楽しむ、社交的なスポーツです。

スポーツは、コロンビア国民にとって、アイデンティティや団結力を高める重要な要素となっています。

8.日本との関係

コロンビアと日本は、長年にわたり友好的な関係を築いてきました。1908年に外交関係が樹立され、110年以上の歴史があります。両国は、民主主義、法治主義、人権の尊重といった基本的価値を共有するパートナーです。

経済関係

日本はコロンビアにとって重要な貿易相手国の一つです。日本はコロンビアから主にコーヒー、花き、石炭、非鉄金属などを輸入し、コロンビアへは自動車、一般機械、電気機器などを輸出しています。近年、日本企業のコロンビアへの投資も関心を集めています。

文化交流

音楽、ダンス、食文化、アニメなどを通じた文化交流が活発に行われています。日本の地方自治体とコロンビアの都市との間で姉妹都市提携も結ばれています。また、両国間の学術交流や人的交流も進んでいます。

開発協力

日本は、政府開発援助(ODA)を通じて、コロンビアの平和構築、貧困削減、インフラ整備、環境保全などを支援してきました。特に、長年の国内紛争からの和平プロセスへの支援は、両国関係における重要な柱の一つです。

人的交流

日本には約3,000人(2023年6月末時点、外務省)のコロンビア人が、コロンビアには約1,000人(2022年10月時点、外務省)の日本人が在留しており、両国の相互理解を深める架け橋となっています。

このように、日本とコロンビアは、政治、経済、文化、開発協力など、多岐にわたる分野で良好な関係を維持・発展させています。
Related_title
もっと見る 

Keyword_title

Reference_title
CIA World Factbook
世界銀行 (World Bank)
UNESCO
財務省
外務省

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 248 pt 
 役に立った数 0 pt 
 う〜ん数 0 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!

まとめ
このテキストのまとめは存在しません。