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菅原道真『不出門』現代語訳・書き下し文と解説
著作名: 走るメロス
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菅原道真『不出門』

ここでは菅原道真が詠んだ『不出門』の書き下し文、現代語訳(口語訳)とその解説を行っています。

白文(原文)

左から右によんでください。

一 從 謫 落 在 柴 荊

万 死 兢 兢 跼 蹐 情

都 府 楼 纔 看 瓦 色

観 音 寺 只 聴 鐘 声

中 懐 好 逐 孤 雲 去

外 物 相 逢 満 月 迎

此 地 雖 身 無 檢 繋

何 為 寸 歩 出 門 行


書き下し文

一たび謫落(たくらく)せられて柴荊(さいけい)に在りてより

万死兢兢たり 跼蹐(きょくせき)の情

都府楼は纔(わず)かに瓦の色を看

観音寺は只だ鐘の声を聴く

中懐好(よ)し逐はん 孤雲の去るを

外物は相逢はん 満月の迎ふるに

此の地 身の檢繋(けんけい)せらるること無しと雖も

何為れぞ寸歩も門を出でて行かんや

現代語訳(口語訳)

一度官職をおわれてあばら家に住んで以来、

万死にあたる罪に恐れおののき、身をかがめ抜き足差し足で歩むような気持ちでいる。

(はるか遠くに見える)太宰府の建物の瓦を、わずかに眺めるだけであり

(大変近くにある)観音寺の鐘を、ただ聞くばかりである。

胸中では、離れ雲が流れ去るのを追うかのよう(都への思いが募り)であるが

外側の世界に対しては、満月のような円満な心で接する(不満の気持ちを外にださないようにしよう)。

この地で手を繋がれて取り調べを受けているわけではないとはいえども、

(左遷された身なので)どうしてわずかな距離でも門を出て行くことができようか、いや、できない。

形式

この漢詩は七つに並んだ漢字が八つの行からなる、七言律詩というスタイルをとっています。「荊」、「情」、「声」、「迎」、「行」が韻を踏んでいます。(押韻という)


単語・文法解説

謫落官職をおわれること
柴荊柴やいばらで作られた粗末な家、あばら家
檢繋手を繋がれて取り調べを受けること



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