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平家物語原文全集「烽火之沙汰 3」 |
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著作名:
古典愛好家
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小松殿に騒ぐ事ありと聞えしかば、西八条に数千騎ありける兵共、入道にかうとも申しも入れず、さざめき連れて、皆小松殿へぞ馳せたりける。少しも弓箭に携るほどの者一人も残らず。その時入道大きに驚き筑、貞能を召して、
「内府は何と思ひてこれらをば呼び取るやらん。是で言ひつるやうに入道が許へ討手なんどもや向かへずらむ。」
とのたまへば、貞能涙をはらはらと流いて、
「人も人にこそよらせ給ひ候へ。いかでかさる御事候ふべき。今朝これにて申させ給ひつる事共も、皆御後悔ぞ候ふらむ。」
と申しければ、入道、内府に仲違ふては悪しかりなんとや思はれけん、法皇仰へ参らせむずる事も、はや思ひとどまり、腹巻脱ぎをき、素絹の衣に袈裟うちかけて、いと心にも起らぬ念珠してこそおはしけれ。
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