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『人虎伝』(虎曰、我前身客呉楚〜)書き下し文・現代語訳(口語訳)と解説
著作名: 走るメロス
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現代語訳(口語訳)

虎が言いました。
「私は以前、呉楚に旅をしていました。
去年、いざ(国に)帰ろうとする道中で、汝墳(地名)に宿をとったのですが、急に病気にかかって発狂してしまいました。
夜になると、戸外から私の名前を呼ぶ者がいたので、とうとう声に応じて外に出て、山谷の間を走りました。
(すると)知らず知らずのうちに、左右の手で地面を掴んで歩くようになっていました。
それからというもの心はますます残忍になり、力はますます強くなっていったのを感じました。
肘と腿を見ると、毛が生えていました。
とても不思議に思いました。
川に自分を映してみると、すでに虎になっていたのです。
しばらく悲しみ嘆いていました。
しかし、生き物を捕まえて食べることを我慢していました。
しばらくすると飢えて我慢することができなくなり、山中の鹿やイノシシ、ノロジカ、兎を捕らえて食事にあてていました。
またしばらくすると、獣は皆(私を)避けるようになり、(獲物を)得ることができずに空腹はますますひどくなりました。
ある日婦人が、山を下りて過ぎて行きました。
このときはちょうど飢えていて、何度も行ったり来たりし(食べようかどうか迷っ)たものの、自分を抑えることができずに、とうとう捕まえて食べてしまいました。
特に美味と感じました。
今でも(婦人がつけていた)首飾りは、岩の下にあります。
これ以来、冠をつけて車に乗る者、歩いていく者、荷物を背負って走るもの、翼があって空を飛ぶ者(鳥)、毛があって地をはっていく者(獣)を見れば、力の及ぶ限り、すべて捕まえて動きを封じ、すぐさま食べ尽くす、これが日常となっています。
妻と子を思わないのではなく、盟友を思わないというわけではありません。
ただ(私のこれまでの)行いが神に背いてしまったため、獣となってしまったからには、人に対して恥ずかしく思うばかりです。
そのために獣の分際として(妻子、友人に)会わないのです。」と。


単語解説

去歳去年
悲慟悲しみ嘆くこと
冠をつける
妻孥妻と子





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