更新日時:
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古代ローマの歴史 3 内乱の1世紀とカエサル |
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著作名:
ピアソラ
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地中海世界に領土を拡大した結果、ローマ社会に多くの富がもたらされるようになりました。
その結果、ノビレス(新貴族)とエクイテス(騎士)という新しい階層が生まれてきます。
ノビレスは、パトリキ(旧来の貴族)と裕福なプレブス(旧来の平民)が婚姻によって新しい支配階層となったもので、後に政務官や元老院議員を独占していきます。
エクイテスは活発な経済活動を行い、第2回ポエニ戦争以降、公共事業や戦争需要、属州の徴税請負などで巨万の富を作った新興の富裕市民でした。
この中でも、徴税請負は属州から国家の必要分以上を徴収して、余った税を自分の利益にしたので、莫大な富を得ることになりました。
こうした富裕層は、中小農民から土地を買い上げたり、公有地を専有するなどして大土地経営を行うようになります。これをラティフンディアと言います。
こうして、貧富の格差が進む中、中小農民の没落が深刻化していきます。
以前説明したように、中小農民は重装歩兵としてローマ軍の中核を担っていました。
そのため、長期間の海外遠征などで戦死したり、戦場になったことで土地の荒廃が進みました。
また、属州から安価な穀物がローマにもたらされたり、戦争奴隷を用いた富裕層のラティフンディアによって、農作物の価格は急速に下落。中小農民は次々と没落していきます。
没落した人々は、財産を持たない無産市民になりました。
無産市民は財産はなかったものの、ローマ市民として民会の投票権をもっていたため、権力者たちは人気を獲得するために、無産市民を喜ばせる政策を行うようになります。
食料を安価に提供する法律の制定や、戦車レースなどの競技、剣闘士による戦いなど、様々なイベントをローマで開催しました。この状況を「パンとサーカス」と言います。
(剣闘士と観客)
また政治の世界でも、元老院の伝統的権威を重んじる閥族派と、護民官を中心とする平民派という2つの派閥が争うようになります。
閥族派と平民派の派閥争いは、ローマ市民全体を巻き込んで行われ、ローマ社会は次第に荒廃し、ローマの軍制度に危機が訪れました。
こうした状況に対し、平民派の護民官グラックス兄弟が改革を試みます。
ローマ軍の中核である重装歩兵の復活が急務だと考えた彼らは、農民の武器自弁が再びできるように、有名無実化していたリキニウス=セクスティウス法を厳格に行う政策をとります。
富裕層の大土地所有を制限し、没落農民に土地を再分配する計画をたてたんですね。
ところが、これに元老院が大反発します。
富裕貴族が、自分たちの利権を失うことを恐れたからです。
改革を推し進めようとしたグラックス兄弟は反対派に暗殺され、その後ローマは様々な権力争いが起こる内乱の1世紀という時代を迎えます。
国内が混乱する間も、ローマは外敵と戦わなくてはなりませんでした。
こうした中、当時の権力者、平民派の政治家マリウスは、武器自弁の原則と市民徴兵を撤廃します。
その後、彼は自分の財産を費やして無産市民から兵士を募集し、同時に武器を供給し軍隊を作っていきました。
マリウスの軍制改革によって、ローマに傭兵軍団できました。
再編成されたマリウスのローマ軍は、北アフリカのユグルタ戦争に勝利します。
また、マリウスと対立していた閥族派のスラも私兵を率いて同盟市戦争など各地の反乱を次々と平定していきます。
こうした状況で、軍人はローマよりも、自分の雇い主に忠誠を誓うようになっていきます。
権力者によるローマ軍の私兵化が進んでいくことになったんですね。
有力な政治家たちは、私兵を編成して、ローマの脅威を取り払っていきます。この時、ポンペイウス(紀元前106頃~紀元前48)、クラッスス(紀元前114頃~紀元前53)、カエサル(紀元前100~紀元前44)という三人の有力な政治家が台頭してきます。
スラの後継者のポンペイウス、騎士階級出身のクラッススは、紀元前73~紀元前71年におこったスパルタクスの乱を平定し、平民派のカエサルは紀元前58年からガリア遠征を行います。
カエサルのガリア遠征の二年前、元老院はこの三人を台頭をよく思っておらず、彼らの勢いを抑えようとしました。三人はこれに反発し、紀元前60年に密約を結び、第1回三頭政治を始めます。
この密約で、ポンペイウスはヒスパニア(現在のスペイン)、クラッススはシリア、カエサルは未平定のガリア(現在のフランス)をそれぞれを勢力圏としました。
こうしてクラッススはシリアのパルティアと戦い、カエサルはガリアと戦いました。
クラッススはパルティアとの戦いで戦死しますが、カエサルはガリアを見事平定し、ローマでの名声が高まりました。
この様子を快く思っていなかったポンペイウスは、元老院側に寝返り、カエサルをローマの公敵と宣言します。
ポンペイウスと元老院の処置にカエサルは激怒し、軍隊をローマに進軍させ、占領します。
ローマ進軍の際、ルビコン川を越えるときカエサルが放ったのが、有名な「賽は投げられた」という言葉です。当時、ローマはルビコン川を北部の防衛線にしており、軍隊を率いてルビコン川を越え、ローマに向かうことは法で禁じられていました。”「ここを渡れば人間世界の悲惨、渡らなければわが破滅。進もう、神々の待つところへ! 我々を侮辱した敵の待つところへ! 賽は投げられた!」”という一節です。
逃亡したポンペイウスを追ってカエサルはエジプトに進軍しますが、エジプト女王クレオパトラに魅了され、エジプトの独立を保持します。ポンペイウスはその後暗殺され、カエサルの権力は絶頂を迎えます。
カエサルは紀元前46年に独裁官になります。
(ユリウス=カエサル)
独裁政治を進めたカエサルは、属州の徴税請負人の廃止や、ユリウス暦を作成させるなどの改革を行い、他方で一般市民には、安価な穀物や様々な競技・イベントを提供しました。
このように、カエサルはローマ市民や軍人などから絶大な人気を誇っていましたが、紀元前44年に独裁官の任期を終身にすると、残っていた共和派が激怒し、カッシウスやブルートゥスらによって暗殺されます。
(カエサルの暗殺)
カエサルの暗殺後、共和派は権力を維持できず、カエサルの部下だったアントニウス、レピドゥスと、カエサルの養子オクタヴィアヌスがそれぞれ台頭し、紀元前43年に第2回三頭政治を行います。
レピドゥスが紀元前36年に失脚すると、アントニウスとオクタヴィアヌスの対立が鮮明になり、その後エジプト女王クレオパトラと結んだアントニウスとオクタヴィアヌスが戦います。
紀元前31年、アクティウムの海戦でアントニウスは破れ、翌年クレオパトラとともに自殺します。
(アクティウムの海戦)
紀元前30年、オクタヴィアヌスはエジプトを併合しプトレマイオス朝は滅亡、ローマは地中海世界を制覇し、長い間続いた内乱の1世紀がようやく終わりました。
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