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『人面桃花(博陵崔護、姿質甚美〜)』現代語訳(口語訳)・書き下し文と解説
著作名: 走るメロス
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現代語訳(口語訳)

博陵の崔護、姿質甚だ美にして、孤潔合ふこと寡なし。
博陵の崔護は、容姿と才能に大変優れていましたが、人と接することをせずに高潔に、世間の人とあまりなじみませんでした。



進士に挙げらるるも、下第す。
科挙の進士の候補生として推薦されましたが、落ちてしまいました。

清明の日、独り都城の南に遊び、居人の荘を得たり。
清明節の日に、一人で都の南の郊外を気ままに歩きまわっていると、人の住んでいる家を見つけました。

一畝の宮にして、花木叢萃し、寂として人無きがごとし。
一畝ほどの家には、花や木が茂っていて、ひっそりとしていて人がいないかのようでした。

門を扣くこと之を久しうす。
(崔護が)しばらく門をたたきました。

女子有り、門隙より之を窺ひ、問ひて曰はく、
(中には)女性がいて、門の隙間からこれ(崔護の様子)をうかがって、尋ねて言いました。

「誰ぞや。」と。
「どちらさまですか。」と。




姓字を以て対へて曰はく、
(崔護が)姓と字を答えて言いました。

「春を訪ねて独り行き、酒渇して飲を求む。」と。
「春を尋ねて一人で歩き、酒を飲んだので(のどが渇いて)水を頂きたいのです。」と。



女人杯水を以て至り、門を開き牀を設けて銘じて坐せしめ、独り小桃の斜柯に倚(よ)りて佇立(ちょりつ)し、意属殊に厚し。
女性は一杯の水を持ってきて、門を開いて腰掛けを用意して(崔護を)座らせ、一人、小さい桃の木の斜めに伸びている枝の下によりかかってたたずんでいましたが、崔護に寄せる思いがはなはだしい様子でした。

妖姿媚態、綽として余姸有り。
なまめかしく美しい姿は、ゆったりとして有り余るほどの美しさでした。

崔言を以て之に挑むも、対へず。
崔護は口説いてみましたが、(女性は)返事をしませんでした。

目注する者(こと)之を久しうす。
(女性は崔護のことを)しばらく見つめていました。



崔辞去するや、送りて門に至り、情に勝へざるがごとくして入る。
崔護が別れの挨拶をして去ろうとすると、(女性は崔護を)送って門まで行き、(崔護に対する)思いを抑えきれないかのように家の中に入っていきました。

崔もまた睠盼(けんべん)して帰る。
崔護もまた振り返りながら帰りました。

嗣後絶えて復た至らず。
その後、二度とその家を訪れることはありませんでした。


来歳の清明の日に及び、忽(たちまち)之を思ひ、情抑ふべからず。
翌年、清明節の日になると、思いがけなくこれ(女性のこと)を思い出し、気持ちを抑えることができませんでした。

逕(ただ)ちに往きて之を尋ぬれば、門牆故(もと)の如くなるも、已に之を鎖扃(さけい)せり。
ただちに(その家に)行ってこれ(女性を)尋ねてみましたが、門と垣はもとのままでしたが、すでに門は鎖で閉じられていました。

因りて詩を左扉に題して曰はく、
そこで詩を左の扉に書いて言いました。



「去年の今日此の門の中(うち)
去年の今日、この門の中で

人面桃花相映じて紅なり
美しい人(女性)の顔と桃の花は互いに映えて紅くそまっていました。

人面は祇だ今何れの処にか去る
美しい顔の人は今どこに去ってしまったのでしょうか。

桃花は旧に依りて春風に笑む」と。
桃の花は昔のままで春風に微笑んでいるのに。


つづき:人面桃花(後数日、偶至都城南、復往尋之〜)』現代語訳(口語訳)・書き下し文と解説

単語・文法解説

姿質外見的な容姿と内面的な才能
進士科挙の科の1つ
清明日祖先の墓を参り、草むしりをして墓を掃除する日
ぶらぶらと歩く
得居人莊「得」は「ゲットする」ではなくて「出くわす、見つける」と訳す
佇立たたずむ
意属相手に寄せる思い
妖姿媚態なまめかしく美しい姿
ゆったりとしている
辞去別れの挨拶をして去る
睠盼振り返る
不復至「不復A」で「復Aせず」と読み、「二度とAしない」と訳す
来歲翌年
ふと、思いがけなく
門牆門と垣




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