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「スーダン共和国」について調べてみよう
著作名: 早稲男
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スーダン共和国

スーダン共和国(以下「スーダン」、英語ではThe Republic of the Sudan)は、北東アフリカに位置する共和制国家です。首都はハルツームです。

このテキストでは、スーダンの特徴を「国土」、「人口と人種」、「言語」、「主な産業」、「主な観光地」、「文化」、「スポーツ」、「日本との関係」の8つのカテゴリに分けて詳しく見ていき、同国の魅力や国際的な影響力について考えていきます。

1. 国土:ナイルの流れと共に広がる大地

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スーダン共和国は、アフリカ大陸で3番目の面積(約186万1484平方キロメートル)を誇る広大な国です。北はエジプト、リビア、東はエリトリア、エチオピア、西はチャド、中央アフリカ共和国、南は南スーダン共和国と国境を接し、東側は紅海に面しています。

国土の中央を世界最長の河川であるナイル川が南北に貫流しており、その支流である白ナイルと青ナイルは首都ハルツームで合流します。このナイル川流域は、古くから農業が栄え、スーダンの人々の生活と文化を育んできました。国土の大部分は平坦な地形ですが、西部にはダルフール地方のジェベル・マッラ山脈(最高峰:3042メートル)、東部には紅海沿岸の山地が広がっています。

気候は、北部が砂漠気候で年間を通して降水量が極めて少なく乾燥している一方、南部に向かうにつれてサバンナ気候となり、雨季と乾季が存在します。年間平均気温は高く、特に夏季は酷暑となる地域もあります。

スーダンは、石油、天然ガス、金、鉄鉱石、銅、クロム、亜鉛、タングステン、銀など、多様な天然資源に恵まれています。これらの資源は、スーダンの経済にとって重要な役割を担っています。


2. 人口と人種:多様な民族が織りなすモザイク国家

スーダンの推定人口は、約4,935万人(2024年7月 - CIA World Factbook)です。人口増加率は比較的高く、若年層が多いピラミッド型の人口構成となっています。国民の約3分の2が農村部に居住していますが、都市部への人口集中も進んでいます。

スーダンは非常に多くの民族が共存する多民族国家です。主要な民族グループとしては、アラブ系(約70%)が最も多く、その他にフール人、ベジャ人、ヌバ人、フサ人などが暮らしています。これらの民族は、それぞれ独自の言語、文化、習慣を持っており、スーダンの多様性を豊かにしています。

公用語はアラビア語と英語ですが、各民族固有の言語も広く使用されています。宗教は、イスラム教スンニ派が大多数を占めており、国民の生活や文化に深く根付いています。その他、キリスト教や伝統宗教も少数ながら信仰されています。


3. 言語:アラビア語を共通語に、多言語が共存

前述の通り、スーダンの公用語はアラビア語と英語です。アラビア語は、行政、教育、メディアなどで広く使用される共通語としての役割を担っています。特にスーダンで話されるアラビア語は、周辺アラブ諸国とは異なる独自の方言(スーダン・アラビア語)として特徴があります。

英語は、高等教育やビジネスの場面で用いられることがあります。これらに加え、国内には100以上もの地域言語や方言が存在すると言われ、各民族コミュニティにおいて日常的に使用されています。これらの言語は、それぞれの民族の文化やアイデンティティと深く結びついています。

識字率については、地域差や男女差が存在すると推測されます。


4. 主な産業:農業を基盤とし、資源開発にも注力

スーダンの経済は、伝統的に農業が中心です。ナイル川流域の肥沃な土地では、綿花、アラビアガム(世界最大の生産・輸出国)、ゴマ、サトウキビ、落花生、ソルガム、雑穀などが栽培されています。特にアラビアガムは、食品や医薬品、工業製品など幅広い用途で利用され、スーダンの重要な輸出品目の一つです。また、家畜の飼育も盛んで、羊、ヤギ、牛、ラクダなどが飼育され、国内消費だけでなく輸出も行われています。

近年では、石油産業が経済の重要な柱となっていましたが、2011年の南スーダン共和国の分離独立により、主要な油田地帯の多くを失いました。しかし、依然として石油はスーダン経済にとって重要であり、新たな油田探査や開発が進められています。また、金をはじめとする鉱物資源の開発も活発化しており、新たな輸出産業として期待されています。

スーダンの国内総生産(GDP)は、497億5000万ドル(2023年推定 - CIA World Factbook)です。経済成長率は、政治情勢や天候、国際的な経済状況など様々な要因により変動します。政府は、農業の近代化、産業の多角化、外国からの投資誘致などを通じて、経済の安定と発展を目指しています。


5. 主な観光地:古代文明のロマンとナイルの雄大な自然

スーダンは、観光資源が豊富であるにも関わらず、まだ十分にその魅力が知られていない「隠れた宝石」のような国です。特筆すべきは、古代クシュ王国の遺跡群でしょう。

メロエ遺跡群 (Meroe Pyramids)

首都ハルツームから北東へ約200kmのナイル川東岸に位置するこの遺跡群は、紀元前8世紀から紀元後4世紀にかけて栄えたクシュ王国の首都でした。ヌビア様式のピラミッドが多数残り、その独特な形状と壮大な景観は圧巻です。2011年にユネスコの世界文化遺産に登録されており、スーダンで最も有名な観光地の一つです。

ゲベル・バルカルとナパタ地方の遺跡群

メロエよりもさらに古い時代のクシュ王国の宗教的中心地であり、巨大な岩山ゲベル・バルカルや神殿、ピラミッドなどが残されています。こちらも2003年にユネスコの世界文化遺産に登録されています。

スアキン島 (Suakin Island)

紅海に面した歴史的な港町で、かつてはアフリカとアラビア半島を結ぶ重要な交易拠点として栄えました。サンゴ石で造られた古い建物群が特徴的で、独特の雰囲気を醸し出しています。

これらの歴史遺跡に加え、ナイル川クルーズや、ディンダー国立公園(Dinder National Park)でのサファリ体験など、豊かな自然を満喫できるアクティビティも魅力です。ディンダー国立公園は、ライオン、ゾウ、キリン、カバ、多様な鳥類など、多くの野生動物の生息地となっています。


6. 文化:多様な民族の伝統が息づく豊かな土壌

スーダンの文化は、アラブ文化とアフリカ文化が融合し、さらに国内の多様な民族の伝統が加わることで、非常に豊かで重層的な様相を呈しています。

音楽と踊り

スーダンでは、伝統音楽や踊りが人々の生活に深く根付いています。各民族が独自の楽器やリズム、踊りを持っており、結婚式やお祭りなどの場で盛んに披露されます。太鼓や弦楽器、管楽器などが用いられ、力強くリズミカルな音楽が特徴的です。

衣装

男性は「ジャラビーヤ」と呼ばれるゆったりとした白い長衣に、「エンマ」と呼ばれるターバンを巻くのが伝統的な服装です。女性は「トーブ」と呼ばれるカラフルな布を体に巻き付けます。これらの衣装は、気候に適しているだけでなく、スーダンの人々のアイデンティティの一部ともなっています。

食文化

スーダンの主食は、「キッサラ」と呼ばれるソルガムや小麦粉で作ったクレープ状のパンや、「アシダ」と呼ばれる練り粥です。これらに、羊肉や鶏肉、野菜などを使った煮込み料理「ムラー」を添えて食べます。また、豆類を使った料理も豊富で、特に「フール」(ソラマメの煮込み)は朝食の定番です。コーヒーは「ジャバナ」と呼ばれ、独特の作法で淹れられ、客人に振る舞われます。

手工芸品

スーダンでは、木彫り、陶器、革製品、金属細工、バスケット編みなど、様々な手工芸品が作られています。これらの工芸品は、各民族の伝統的なデザインや技術が反映されており、スーダンの文化を象徴するものとなっています。

社会習慣

スーダンの人々は、一般的に親切で гоスピタリティに溢れていると言われています。家族やコミュニティの絆を大切にし、年長者を敬う文化があります。イスラム教の教えが生活の隅々に浸透しており、挨拶や食事のマナーなどにもその影響が見られます。

7. スポーツ:サッカーを中心に国民的な人気

スーダンで最も人気のあるスポーツはサッカーです。国内にはプロサッカーリーグがあり、多くの国民が熱狂的なファンです。スーダン代表チームは、アフリカネイションズカップなどの国際大会にも出場しており、過去には優勝経験もあります。

サッカー以外にも、バスケットボールや陸上競技、レスリングなども人気があります。特に陸上競技では、中長距離を中心に国際的に活躍する選手も輩出しています。ナイル川や紅海では、水泳やボート競技なども行われています。

政府は、スポーツ振興を通じて国民の健康増進や青少年の健全育成、そして国際的な交流の促進を目指しています。


8. 日本との関係:友好と協力の歴史

日本とスーダン共和国は、1956年のスーダン独立と同時に国交を樹立して以来、長年にわたり友好関係を築いてきました。

外交関係

両国は、互いに大使館を設置し、政治、経済、文化など様々な分野で交流を続けています。日本は、スーダンの平和と安定、そして持続可能な開発を支援するため、様々な国際会議や二国間協議の場でスーダン政府と対話を行っています。

経済協力

日本は、スーダンに対して、国際機関を通じた人道支援や、基礎生活分野(水供給、保健、教育など)、農業開発、平和構築といった分野で経済協力を実施してきました。これらの協力は、スーダンの国民生活の向上や国の発展に貢献することを目的としています。

文化交流

学術交流や文化紹介イベントなどを通じて、両国国民の相互理解を深める取り組みも行われています。数は多くありませんが、スーダンには日本の文化に関心を持つ人々がおり、また日本国内でもスーダンの文化や歴史を紹介する活動が見られます。

在留邦人・在日スーダン人

スーダンには、国際機関職員やNGO関係者、ビジネス関係者など少数の日本人が在留しています(2023年10月時点で36人 - 日本の外務省)。また、日本にも留学生や研究者、ビジネス関係者などスーダンの人々が暮らしており、両国間の架け橋となっています。

スーダンは現在、国内情勢が不安定な時期にありますが、日本政府はスーダンの平和と安定に向けた国際社会の取り組みを支持し、人道状況の改善や平和の定着に向けた支援を継続していく方針です。

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