更新日時:
|
|
蜻蛉日記原文全集「貞觀殿の御方はおととし尚侍になりたまひにき」 |
|
著作名:
古典愛好家
9,927 views |
貞觀殿の御方は、おととし尚侍(ないしのかみ)になりたまひにき。あやしく、かかる世をも問ひたまはぬは、このさるまじき御中のたがひにたれば、ここをもけうとくおぼすにやあらん、かくことのほかなるをもしり給はでとおもひて、御文たてまつるついでに、
ささがにのいまはとかぎるすぢにても かくてはしばしたえじとぞ思ふ
ときこえたり。返りごと、なにくれといとあはれにおほくのたまひて、
たえきともきくぞかなしきとし月を いかにかきこしくもならなくに
これをみるにも、見聞きたまひしかばなど思ふに、いみじく心ちまさりてながめ暮らすほどに、文あり。
「文物すれど、返りごともなくはしたなげにのみあめれば、つつましくてなん。今日もと思へども」
などぞあめる。これかれそそのかせば、返りごと書くほどに、日暮れぬ。まだ行きもつかじかしと思ふほどに、みえたる。人々
「なほあるやうあらん、つれなくてけしきを見よ」
などいへば、思ひかへしてのみあり。
「つつしむことのみあればこそあれ、さらに来じとなん我は思はぬ。人のけしきばみくせぐせしきをなん、あやしと思ふ」
など、うらなくけしきもなければ、けうとくおぼゆ。
つとめては、
「ものすべきことのあればなむ、今、あすあさてのほどにも」
などあるに、まこととは思はねど、思ひなほるにやあらんと思ふべし。もし、はたこのたびばかりにやあらんと心みるに、やうやうまた日かず過ぎゆく。さればよと思ふに、ありしよりもけにものぞかなしき。
このテキストを評価してください。
役に立った
|
う~ん・・・
|
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。 |
|
蜻蛉日記原文全集「さいつころ、つれづれなるままに」
>
蜻蛉日記原文全集「つくづくと思ひつづくることは」
>
蜻蛉日記原文全集「この御方、東宮の御親のごとして候ひ給へば」
>
平家物語原文全集「西光被斬 2」
>
枕草子 原文全集「社は/蟻通の明神」
>
枕草子 原文全集「弘徽殿とは」
>
蜻蛉日記原文全集「いきもてゆくほどに」
>
最近見たテキスト
蜻蛉日記原文全集「貞觀殿の御方はおととし尚侍になりたまひにき」
10分前以内
|
>
|
デイリーランキング