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市民法とは わかりやすい世界史用語1145
著作名: ピアソラ
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市民法とは

市民法は、文字通りには「市民の法」を意味し、古代ローマの市民権を持つ者のみに適用される法体系でした。その起源は、ローマの建国初期にまで遡り、伝統的な慣習法や、初期の成文法である十二表法などがありました。

市民法の源泉

市民法の主な源泉は以下のようなものでした。
慣習法: ローマ社会において長年にわたり受け継がれてきた慣習や伝統は、初期のローマ法において非常に重要な役割を果たしました。これらの慣習は、人々の行動規範となり、紛争解決の基準となりました。

十二表法: 紀元前5世紀半ばに制定された十二表法は、ローマ最初の成文法であり、市民の権利と義務を明確に規定したものでした。これは、貴族(パトリキ)と平民(プレブス)の間の社会的な対立の中で、平民の要求によって制定されたものであり、法の下の平等を求める動きの表れでもありました。十二表法は、その後のローマ法の発展の基礎となり、市民生活の様々な側面、例えば、財産権、相続、契約、犯罪などに関する規定を含んでいました。



民会法: 民会で可決された法律も、市民法の重要な源泉でした。これらの法律は、特定の状況や問題に対応するために制定され、市民全体の権利や義務を定めるものでした。

元老院決議: 元老院の決議も、時代とともに法源としての重要性を増していきました。特に共和政後期から帝政期にかけて、元老院の権威が高まるにつれて、その決議が法的拘束力を持つことが一般的になりました。

法務官告示: 法務官は、司法を担当する官職であり、任期が開始される際に、その任期中に適用する法原則や訴訟手続きを示した告示を発布しました。特に、外国人係法務官の告示は、万民法の発展に大きな影響を与えましたが、都市法務官の告示も、市民法の解釈や適用において重要な役割を果たしました。法務官告示は、毎年更新されるものでしたが、次第に定型化され、実質的な法源としての地位を確立しました。

法学者の解釈: ローマの著名な法学者たちは、法律問題に関する専門的な知識や解釈を提供しました。彼らの見解は、個々の訴訟における判断に影響を与え、次第に法源としての権威を持つようになりました。特に帝政期には、皇帝から法的意見を表明する権利を与えられた法学者の意見は、非常に重要な意味を持つようになりました。

皇帝の勅令: 帝政期に入ると、皇帝の勅令が最も重要な法源となりました。これには、皇帝が発布する様々な形式の法令、例えば、布告、勅答、勅法、詔勅などが含まれます。皇帝の権威の増大とともに、これらの勅令は市民法を含むローマ法全体の主要な源泉となりました。

市民法の適用範囲と特徴

市民法は、原則としてローマ市民権を持つ者のみに適用されました。外国人(ペレグリーニ)は、市民法に基づく権利や義務を享受することはできませんでした。市民法は、ローマ固有の伝統や価値観を反映しており、形式主義的な手続きや厳格な解釈を特徴としていました。例えば、初期の市民法における契約は、特定の形式的な言葉や儀式を伴わなければ有効とされませんでした。また、市民法の訴訟手続きも、厳格な形式が要求され、わずかな手続き上のミスが訴訟の敗訴につながることもありました。

市民法は、主に以下の分野を対象としていました。
家族法: ローマ市民の婚姻、親子関係、養子縁組、財産管理などに関する規定。
財産法: ローマ市民の財産の所有、譲渡、相続などに関する規定。
債務法: ローマ市民間の契約や不法行為に基づく債務関係に関する規定。
訴訟法: ローマ市民間の紛争を解決するための訴訟手続きに関する規定。
刑法: ローマ市民が犯した犯罪とその処罰に関する規定。

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