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『大串次郎の徒歩での先陣(畠山、五百余騎で、やがて渡す。~)』 平家物語 わかりやすい現代語訳と解説 |
著作名:
走るメロス
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はじめに
ここでは、平家物語の中の『大串次郎の徒歩での先陣』(畠山、五百余騎で、やがて渡す〜)の現代語訳・口語訳とその解説を行っています。書籍によっては「宇治川先陣」などとするものもあるようです。
あらすじ
宇治川の戦いが始まり、佐々木高綱と梶原影季が先陣をきって、敵陣に飛び込んでいきます。この話は、2人が飛び込んだあとのストーリーです。
原文
畠山、五百余騎で、やがて渡す。向かへの岸より山田次郎が放つ矢に、畠山馬の額を篦深(のぶか)に射させて、弱れば、川中より弓杖を突いて降り立つたり。岩浪、甲の手先へざつと押し上げけれども、事ともせず、水の底をくぐつて、向かへの岸へぞ着きにける。上がらむとすれば、後ろに者こそむずと控へたれ。
「誰そ」と問へば、
「重親」と答ふ。
「いかに大串か」
「さん候ふ」。
大串次郎は畠山には烏帽子子(えぼしご)にてぞありける。
「あまりに水が速うて、馬は押し流され候ひぬ。力及ばで付きまゐらせて候ふ」と言ひければ、
「いつもわ殿原は、重忠がやうなる者にこそ助けられむずれ」
と言ふままに、大串を引つ掲げて、岸の上へぞ投げ上げたる。投げ上げられ、ただなほつて、
「武蔵の国の住人、大串次郎重親、宇治川の先陣ぞや」
とぞ名のつたる。敵(かたき)も味方もこれを聞いて、一度にどつとぞ笑ひける。
現代語訳
(佐々木高綱と梶原影季が先陣をきって敵陣に飛び込んでからすぐに)、畠山重忠は500騎をつれて川を渡ってきた。向かいの岸から山田次郎が放った矢が、畠山の馬の額に深く突き刺さったために馬が弱ってしまったので、(馬を降りて)川中に、弓を杖代わりに立った。岩の間の流れが兜の前にざっと押し寄せてきたが、畠山はものともしない。川の底をくぐって、向かいの岸に着いた。(川から岸に)あがろうとすると、後ろに誰かがむんずとしがみついています。
畠山:「誰だ?」と尋ねると
?:「重親にございます。」と答えた。
畠山:「おぉ、大串殿か」
重親:「そうでございます」
大串次郎重親は、畠山にとって(大串次郎が)元服のときに名前をさずけた烏帽子子であった。
大串:「あまりにも水の流れが速いので、馬は押し流されてしまいました。自力では及ばないので、あなた様にお付き申し上げておりました。」と言うと、
畠山:「いつもお前のようなものは、この重忠に助けられるのだな」
と言って、畠山をは大串引き上げて、岸の上に投げ上げた。大串は、投げ上げられたあとに体裁を整えて、
「武蔵の国の、大串次郎重親、宇治川の戦いの先陣である」
と名乗った。(佐々木高綱と梶原影季が先陣をきっていたことを知っていた)敵も見方もこれを聞いて、いっせいにどっと笑ったのであった。
単語・解説
篦深 | 矢が深くつきささる |
烏帽子子 | 元服のときに名前をさずけた子 |
こそ助けられむずれ | こそ+已然形で係り結びの法則。「むずれ」は助動詞「むず」の已然形 |
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